セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 消PD12-8:

扁平苔癬の発症リスク因子とインターフェロン治療による影響

演者 長尾 由実子(久留米大・消化器疾患情報)
共同演者 佐田 通夫(久留米大・消化器疾患情報DELIMITER久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】 HCVは種々の病態を引き起こす。前癌病変である口腔扁平苔癬(OLP)や口腔扁平上皮癌(OSCC)もその1つである。これらの疾患とHCV感染の主な実証事項は次の通りである:(1)OLPとウイルス側因子(HCV RNA量、HCV genotype)(2)OLP・OSCC内におけるHCV RNAの存在と増殖(3)IFN治療とOLPの関連性(4)IFN治療が行われたOLPの長期予後症例における組織内HCV RNAと臨床病理学的検討(5)複数のHCV高浸淫地区における住民検診によるOLPの疫学。本調査では、OLPのcase control studyを行い、OLP発症リスクを検討すると共に、HCV core変異、HCV ISDR変異を検討した。【方法】方法1: 2010年2月~2011年6月までに口腔疾患領域の異常を主訴に当大学病院を受診した全患者226名のうちOLPを認めた59名(グループ1A)と、性と年齢を一致させた九州X町在住の正常口腔粘膜を有する住民85名(グループ1B)についてcase control studyを行なった。方法2:上記226名のちIFN治療歴のあるHCV感染者(1b・high)についてHCV core aa70/91変異、HCV ISDR変異を測定した19名をOLP12名(グループ2A)とOLPなし7名(グループ2B)で比較した。【成績】グループ1AにおけるHCV抗体並びにHCV RNA陽性率は67.80%・59.32%、グループ1Bでは31.76%・16.47%であった(各々P<0.0001)。多変量解析によりOLPの発症リスク因子は、HCV持続感染、低アルブミン血症(<4.0 g/dL)、喫煙歴であった。各オッズ比は6.58、3.53、2.58であった。グループ2Aと2B間においてHCV core aa70/91変異、HCV ISDR変異に有意差は認められなかった。【結論】OLPの発症に、HCVのウイルス側因子は影響しないと考えられた。IFN治療後、臨床病理学的にOLPが完全に消失しても組織内からHCV RNAが検出されることからも、OLP発症には宿主の免疫応答が密接に関与すると考えられる。OLPとHCV感染の関連が強いわが国では、OLP患者に対する肝病態の精査だけでなく肝疾患患者に対する口腔精査も大切である。(BMC Gastroenterol 2012)。
索引用語 扁平苔癬, C型肝炎ウイルス