セッション情報 一般演題

タイトル O-103:

興味ある経過をたどった嚢胞性膵腫瘍の1例

演者 水野 浩志(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科)
共同演者 石橋 潤一(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 奥薗 徹(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 濱本  英剛(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 宮下 祐介(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 李 仁(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 高橋 佳之(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 羽根田  晃(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 高林 広明(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 三宅 直人(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 三島 利之(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 松田 知己(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 中堀 昌人(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科), 望月 福治(仙台厚生病院 健康管理センター), 山内 淳一郎(消化器センター 消化器外科), 遠藤 希之(仙台厚生病院 臨床検査センター 病理診断臨床検査科), 岩間 憲行(仙台厚生病院 臨床検査センター 病理診断臨床検査科), 長南 明道(仙台厚生病院 消化器センター 消化器内科)
抄録 症例は72歳、男性。以前より膵頭部に5cm大の単房性の嚢胞性病変と膵鉤部の4cm大の分枝型IPMNを認め、定期的に経過観察中であった。経過中、膵頭部の嚢胞性病変はサイズに著変はなかったものの、内部のエコー像に変化を認めていた。既往歴は労作性狭心症、経皮的冠動脈ステント留置術後、高血圧症。生活歴、家族歴には特記事項なし。2008年8月、37度台の発熱および心窩部の違和感を訴え外来を受診。腹部エコーにて膵頭部の嚢胞性病変の増大を認め、嚢胞内感染を疑い入院となった。入院後、絶食ならびに抗菌薬の投与を行ったが発熱の改善を認めなかった。腹部エコーを再検したところ、肝左葉に膵の嚢胞に連なる膿瘍様病変を認め、膵嚢胞が肝に穿破したものと考えた。これに対し経皮経肝的にドレナージチューブを留置したところ症状の改善を認め、ドレナージチューブ抜去の上退院となった。その後も腹部エコー、PET-CT、造影CTなどにて定期的な経過観察を施行していたが、2009年2月のCTにて膵頭部の嚢胞性病変の増大ならびに膵頭部に乏血性の腫瘍性病変が新たに認められた。尾側膵管の拡張も伴っており、膵癌の合併を疑い入院となる。EUSでは膵頭部の十二指腸側に径30mm大の辺縁不整な低エコー腫瘤を認めた。副膵管からアプローチした膵管造影では主膵管の膵頭部での完全な途絶を認めたが、膵頭体移行部の分枝膵管より以前よりフォロー中の嚢胞は造影された。嚢胞内には明らかな結節性病変を認めず、嚢胞辺縁の壁不整も認めないことから、IPMN由来の浸潤癌よりはIPMNに併存した浸潤性膵管癌と考えられた。画像上は明らかなリンパ節転移や遠隔転移、大血管への浸潤を示唆する所見を認めず、膵頭十二指腸切除術を行う方針となった。病理組織診断は中~低分化型管状腺癌からなる浸潤性膵管癌で、pT3、pN3、pM0、stagIVbであった。興味深い経過をたどった膵腫瘍の1例を経験したので、若干の考察を加え報告する。
索引用語 IPMN, 膵癌