抄録 |
【症例】35歳・女性【主訴】全身倦怠感、食欲不振【既往歴】低身長あり、過去に一度精査したが異常なし。平成20年糖尿病。【現病歴】平成21年5月中旬頃より全身倦怠感出現。5月下旬になり食欲不振、悪心、腹部重苦感も出現したため5月30日近医を受診。腹部USにて腹水貯留を認めたため6月2日当科紹介入院。【入院時現症】身長127.2cm、体重40.5kg【入院時検査成績】WBC 6700/μl,RBC 383万/μl, Hb 13.7g/dl, Plt 13.5万/μl, PT 44.5%, T.Bil 5.21mg/dl, AST 187U/l, ALT 86U/l, LDH 1024U/l, ALP 714U/l ,γGTP 1670U/l,HBs抗原(-) ,HCV抗体(-),IgG 1768mg/dl,IgA 632mg/dl,IgM 285mg/dl, CEA 14.2ng/ml,AFP 3.98ng/ml,CA19-9 673.21U/ml,CA125 1890mAU/ml。【入院時腹部CT】肝の腫大と脂肪化を認め、多量の腹水を認めた。【経過1】入院後、腫瘍マーカー高値のため悪性疾患の検索を施行したが、明らかな異常は認めなかった。その後、肝機能障害の原因が不明であったため6月16日肝生検を施行。【肝生検所見】幅広い間質の増成でP-P,P-C bridgingを認め、再生結節を形成していた。また、肝細胞のballooning、変性を認めたが炎症細胞浸潤は軽度であり、組織学的にはアルコール性肝硬変が最も考えられる所見であった。【経過2】本症例は、その後の病歴聴取により1日ビール700ml程度飲酒することを確認し、さらに過去の検診結果より4年前からγGTP高値(200~800U/l)の肝機能異常が持続していることが判明したため、最終的に肝機能障害の原因はアルコールであると診断した。【考察】今回腫瘍マーカーの中でCEA、CA19-9、CA125が高値であった。そのうちCEAとCA19-9は肝硬変の際に上昇することがあり、病態の改善とともに低下するとされており、本症例でも肝機能の改善とともにその値は低下したが、CA125高値の機序については不明であった。【まとめ】今回腫瘍マーカー高値の若年女性アルコール性肝硬変の1例を経験した。腫瘍マーカーが高値であったため悪性疾患を強く疑い診断に苦慮したが、最終的には肝生検にてアルコール性肝硬変と診断した。 |