セッション情報 |
パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)
ウイルス性肝炎と肝外病変
|
タイトル |
肝PD12-11:C型慢性肝炎とインスリン抵抗性:鉄過剰がインスリン抵抗性におよぼす影響
|
演者 |
小林 由直(三重大保健管理センター) |
共同演者 |
岩佐 元雄(三重大大学院・消化器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】C型慢性肝炎 (CH-C) では糖代謝異常の合併頻度が高いことが報告されている。糖新生の亢進はインスリン抵抗性に大きく関与することが知られており、NS3やNS5AなどのHCV蛋白は酸化ストレスを介して糖新生を亢進することが報告されている。一方、CH-Cの肝臓では鉄過剰が高頻度で認められるが、鉄沈着が糖代謝に及ぼす影響は十分に検討されていない。我々は、CH-Cにおけるインスリン抵抗性について検討し、さらに鉄過剰の糖代謝に及ぼす影響について検討した。【方法】CH-C患者130名(男:女=65:65、平均56.4歳)について、HOMA-IRおよびHbA1c (JDS値) を測定し、抗ウイルス療法によりHCVが消失した29例について治療前後でのHOMA-IRの変化を検討した。また、肝生検を施行した42例について鉄沈着マーカー、酸化ストレスマーカー (8-OHdG)、糖新生に関連するphosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK)遺伝子の発現およびHOMA-IRについて相関を検討した。【結果】HbA1c (JDS) ≧ 5.8 %の頻度は genotype 1で8/94 (8.5%)、genotype 2 で2/36 (5.6%)であり、HOMA-IR ≧ 2.0 の頻度は genotype 1で 36/94 (38.3%)、genotype 2で16/36(44.4%)であった。Peg-IFNおよびリバビリン治療によりSVRが得られた症例では、治療終了直後の平均HOMA-IRは治療前よりも上昇していたが (p<0.01)、治療終了24週後には治療前よりも有意に低下していた (p=0.01)。血清フェリチン値はHOMA-IRと有意な相関 (r=0.464, p=0.02) が得られ、肝鉄沈着スコア及び8-OHdGとも相関した。8-OHdGは転写因子であるFoxO1発現量と相関し、さらにFoxO1発現量はPEPCK発現量と有意に相関した。【結論】CH-Cにおいてインスリン抵抗性は高頻度に認められ、HCVの消失により改善した。また鉄過剰は、酸化ストレスの発生によるFoxO1の活性化を介して糖新生関連酵素の転写を促進し、インスリン抵抗性に影響を与える可能性が考えられた。 |
索引用語 |
インスリン抵抗性, 鉄過剰 |