セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 消PD12-12:

肝硬変における膵内分泌細胞の臨床病理学的検討

演者 坂田 雅浩(久留米大・消化器内科)
共同演者 鹿毛 政義(久留米大病院・病院病理部), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】肝硬変では耐糖能異常を高率に合併する。特に食後高血糖及び高インスリン血症を認め、近年では肝発癌などの合併症との関連も示唆されている一方で、肝硬変例における膵内分泌細胞の変化は未だ不明であり、病理学的に検討した。【方法】対象は剖検時の除腔水体重から求めたBMIが25未満であった当院剖検症例。コントロール(con)18例、C型肝硬変(LC)11例、糖尿病(DM)6例。臨床・病理診断を満たし、LC群は糖尿病治療歴がない事、DM群ではインスリン治療歴がない事を条件とした。LC群では診療記録または保存血清を用いて血糖値、IRI、FFA、C-ペプチドを調べた。膵尾部組織切片を用い、各群の組織をそれぞれインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンで染色した。画像解析にはWin ROOF Ver.5.7 (MITANI社)を用い、ラ氏島面積とラ氏島における各種陽性細胞の面積を求めた。細胞増殖に関して、PCNA染色を行い、各々陽性細胞数を計数した。また、β細胞の分化・機能維持に重要な転写因子PDX-1陽性細胞を評価した。以上の結果を3群間で比較評価した。【成績】性別、年齢、BMIは3群間に差を認めなかった。ラ氏島の面積は、con群と比較してLC群で有意に大きく、PCNA陽性細胞の有意な増加を伴っていた(P = 0.002)のに対して、DM群では有意に小さかった。LCではインスリン陽性細胞とグルカゴン陽性細胞がそれぞれcon群と比較して有意に減少し(P = 0.001、P =0.035)、ソマトスタチン陽性細胞は、増加していた(P = 0.001)。これに反し、PDX-1陽性細胞はLC群で有意に増加していた(P = 0.001)。LC群において、血中インスリン濃度の低下は認められなかった(血糖 111.5 ± 15.0, IRI 19.1 ± 4.2, C-ペプチド 2.56 ± 0.6)。【結語】肥満を除くC型肝硬変ではラ氏島が肥大しPDX-1陽性細胞も増加しているが、インスリン陽性細胞は逆に減少していた。肝硬変では膵β細胞機能異常が存在している可能性が示唆された
索引用語 肝硬変, 膵臓