抄録 |
【目的】アルコール性肝硬変患者において肥満(BMI 25以上)の合併の割合が39%と高率であり、特に飲酒量5合未満の群では50%と高かった。一方、飲酒量5合以上の群では、BMI 18.5未満の例が17%(一般人口では7%)と有意に高かった。このように栄養障害がアルコール性肝障害(ALD)の進展に深く関与していると考えられる。今回、ALD患者への管理栄養士による栄養指導の効果を検討した。【方法】ALDを住民検診や定期健診で指摘され、当院を紹介された男性22例女性4例について、全例に栄養相談を勧め、管理栄養士による栄養相談を受けた群と拒否した群での、肝機能改善の差を検討した。【成績】女性と高齢者各1例にBMI 18.5未満の栄養不良例を認め、栄養相談を受講し断酒している。男性で拒否した群18例は、受けた群8例より比較的若年で(受講群:拒否群, 56歳:49歳)、BMIが高く(受講群:拒否群,23.1:25.2)、独身や単身赴任が多く、多忙や自分で節酒できるなど依存症の否認に近い理由で拒否する例が多かった。ALTは拒否群で高く(受講群:拒否群,40:54)、一方、γGTPは受講群で高かった(受講群:拒否群, 203 IU/L:152 IU/L)。当院において管理栄養士による栄養相談を受けたALD群で、肝機能改善率が高かった(γGTPは受講群 8週間で203から105 IU/L: 拒否群152から137 IU/L)。女性例では、栄養相談を受けた群では、男性よりより肝機能改善率が高かった。ブリーフインターベンションを組み合わせ、採血結果の待ち時間に栄養相談をしたところ受講率が上がった。【結語】管理栄養士による栄養相談を受けた群で、肝機能改善率が高かった。今後は管理栄養士による生活指導を活用し、ALDの進展予防を模索すべきと考えられるが、栄養障害がある可能性が高いBMI高値例やALT高値例で受講率が低く、今後はこのような群を採血結果の待ち時間に受講してもらうなど、栄養相談にどのように結び付けていくかも検討しなくてはならない。 |