セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 消PD14-1指:

わが国における急性肝不全の実態:新たな診断基準に準拠した全国調査の成績

演者 中山 伸朗(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
共同演者 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】厚労省研究班の急性肝不全の診断基準は,劇症肝炎の他,肝炎以外の症例および非昏睡例も含む。これらの実態を究明するため,劇症肝炎分科会は平成23年度より同基準の全国調査を開始した。【方法】消化器病学会,肝臓学会の評議員が勤務する552診療科および救急医学会の会員が勤務する463診療科を対象として,2010年に発症した急性肝不全および遅発性肝不全(LOHF)のアンケート調査を実施した。【成績】急性肝不全211例(非昏睡型96例,急性型61例,亜急性型54例),LOHF 9例の計220例が登録された。急性肝不全は肝炎症例が198例(非昏睡型85例,劇症肝炎急性型54例,亜急性型49例),肝炎以外の症例が23例(非昏睡型11例,急性型7例,亜急性型5例)で,LOHFは全例が肝炎症例であった。非昏睡型はウイルス性が43例(44.8%:A 11例,B 26例,その他6例)で,薬物性は9例(0.9%),自己免疫性は4例(0.4%),成因不明は27例(28.1%),肝炎以外の症例は11例(11.5%)であった。LOHFも含めた昏睡型における成因は,ウイルス性51例(41.1%:A 5例,B 38例,その他8例),薬物性8例(6.5%),自己免疫性7例(5.6%),成因不明例41例(33.1%),肝炎以外12例(9.7%)であった。なお,昏睡型におけるウイルス性の頻度は急性型が47.5%で非昏睡型と同等だったが,亜急性型(35.2%)とLOHF(33.3%)では低率であった。肝炎以外の症例の成因としては,循環障害,悪性腫瘍,術後肝不全が多かった。内科治療による救命率は,肝炎症例では非昏睡型86.7%,急性型31.7%,亜急性型19.4%,LOHF 0%,肝炎以外の症例では非昏睡型45.5%,急性型14.3%,亜急性型0%で,肝移植実施例における救命率も62.2%と低率であった。また,B型既往感染の再活性化例も9例登録され,全例が死亡していた。【考案と結語】2010年の急性肝不全は,急性型でウイルス性症例が減少し,内科的治療例および肝移植実施例とも救命率が低下するなど実態は変貌していた。また,B型では既往感染の再活性化例は未だ多く,予後が不良であった。
索引用語 急性肝不全, LOHF