セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の最前線

タイトル 肝S2-3:

発癌リスクとウイルス排除の可能性からみた最新のC型肝炎治療

演者 坂本 穣(山梨大附属病院・肝疾患センターDELIMITER山梨大・1内科)
共同演者 前川 伸哉(山梨大・1内科DELIMITER山梨大・肝疾患地域先端医療システム学), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】C型肝炎治療の目的はウイルス排除と肝発癌抑止である。ウイルス変異と宿主ゲノム解析からHCV排除の可能性と肝線維化診断による肝発癌リスクを評価した。【方法】2003年12月から当科および関連施設で組織するY-PERSに登録されたP+R 1079例、P+R+protease阻害剤(PI)23例、54.9±10.4歳(17~80歳)、M/F=632/470、1b/2a/2b/その他=725/199/145/33を対象とし、HCVウイルス変異(ISDR/IRRDR、コアアミノ酸)と宿主のIL28B、ITPA SNPsと治療成績を検討し、発癌危険因子を通院中の患者のFibroscan測定により検討した。【結果】1)P+R例の1b/2a/2b型のSVR率は53%(244/462)、87%(104/120)、80%(74/92)であり、多変量解析によるSVR規定因子は2a+2b、F因子≦1、IL28B TTで(p<0.001)、1b型(≦52週)では≦60歳、ISDR変異≧1、IL28B TTであった。P+R+PIでも難治が予測されるNVR規定因子はIRRDR変異数≦2、IL28B TG+GGであった(p<0.01)。24週陰性化(LVR)例は薬剤adherenceが維持できればF≦1、ITPA AA+ACでSVRが達成された。2)P+R+PIはISDR、コア、IL28Bの難治要因によらずRVRが達成された。効果判定可能な6例は全例SVRであったが、いずれもIRRDR変異数≧4であった。3)5年発癌率(平均観察期間3.6年)はSVRで非SVRに比し有意に低下(2.1%対10.6%、p=0.007)し、とくにIFN開始時年齢≧60歳、男性、F≧3で低下がみられたが、SVR後も発癌リスクが高く(p<0.05)、とくにFibroscan≧12.3KPaが高発癌危険群であった。【結論】P+R療法でウイルス排除の可能性が高いのは2a+2b型、F≦1、IL28B TT(major)で、1b型でもISDR/IRRDRの多変異例やLVR例での薬剤adherence維持例である。P+R+PIではP+R難治例もSVR達成が期待できるがP+RのNVR予測例やIRRDR少変異例では難治が予測される。しかし高齢者・男性・肝線維化進展例では発癌リスクが高く、ウイルス排除の可能性と肝発癌リスクを検討し、積極的に治療介入することが必要であると考えられた。
索引用語 ウイルス変異, 宿主ゲノム変異