セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 肝PD14-2:

新たな診断基準に基づく急性肝不全の実態

演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 横山 健(手稲渓仁会病院・ICU), 高橋 功(手稲渓仁会病院・救急部)
抄録 【背景と目的】肝炎以外の病態も包含する重症急性肝障害を統合的にとらえ、諸外国との比較でも整合性を確保するため、急性肝不全(ALF)の診断基準が策定された。1997年4月当センター発足後当院ICU, 救急部と共に診療した重篤な急性肝障害にALF診断基準を適用しその実態を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】1997年4月から2012年2月まで当センターで診療した、PT活性40%以下又はINR 1.5以上のALF症例を対象とした。ALFに対し1)診断、2)成因分類、3)治療成績を検討した。【成績】)1)過去15年間に診療したALF 97例、類縁の遅発性肝不全1例の計98例(女51例、年齢中央値48[16-84]歳)では、PT活性(中央値、以下同様)23.2(5.0-46.7)%, INR 2.90(1.64-27.51)であった。PT>40%が3例(41.0-46.7%、INR: 1.71-1.85)存在した。2)これら98例は成因別にvirus性47, 循環不全9, AIH 8, 薬物性7, 代謝性4, 悪性腫瘍肝浸潤2, 成因不明21例で、virus性ではHBV 25(急性感染16、無症候性carrier 6[誘因なし5, 化療後1], de novo疑診3), HEV 15, HAV 5, HCV 1, EBV 1例であった。98例中昏睡型は52例で、その成因は順に、virus性 24(HBV 19, HEV4, HCV1), AIH 6, 薬物性5(アレルギー3), 代謝性3, 悪性腫瘍2, 循環障害1, 不明11例であった。HBVでは急性感染11, 無症候性carrier 4, de novo 疑診3例であった。3)98例中65例でmPSL パルス療法が、昏睡型52例中38例でHDF中心の血液浄化療法が行われ、72例(非昏睡型43、昏睡型29例)が内科治療(64例)、または肝移植(8例)で生存した。【結論】ALFの診断基準は、以前の急性肝炎「重症型」(PT 40%以下)症例を全て含み、retrospectiveな検討において臨床的瑕疵を認めない。昏睡型の成因としてはHBV等virus性が依然重要だが、AIHがそれに次ぎ、成因不明例も20%を占めた。急性発症様AIHは成因不明例にも含まれる可能性が推測される。ALFの診断基準適用が日本における重症急性肝障害の実態をより相対的に理解する契機となると思われた。
索引用語 急性肝不全, ALF