抄録 |
【目的】当院では肝炎劇症化の予知・予防の観点から、2004年以降北東北の約40病院とPT80%以下の急性肝障害患者の共同管理と劇症化予知式の検証を行い、2009年からは全ての急性肝障害患者を対象としたシステムに拡大し、成因と予後に関する検討を行っている。このシステムを利用し,急性肝不全の実態を検討した。なお、急性肝不全の基準は「発症から8週間以内にPTが50%以下またはINR値が1.5以上を呈する、ないしは肝性脳症を発症した症例」とし、「非代償性肝硬変を除く慢性肝疾患の先行している症例」も含めて集計した。【対象・方法】2004年8月から2011年12月までに登録された急性肝障害481症例のうち基準を満たした115例について検討した。【結果】非昏睡型が93例(83.9%)、昏睡型急性型が12例(8.9%)、昏睡型亜急性型が6例(4.5%)、LOHFが3例(1.8%)、acute on chronic型が1例(0.9%)であった 。成因は肝炎例でウィルス性29例(25.2%)、自己免疫性10例(8.7%)、薬物性13例(11.3%)、成因不明36例(31.3%)であり、非肝炎では循環不全が19例(16.5%)、代謝性3例(2.6%)、中毒性4例(3.5%)、その他1例 (0.9%)であった。救命率は非昏睡型が81% に対し、昏睡型急性型で27.2%、昏睡型亜急性型で16.7%であった。LOHF、acute on chronic型では救命例は認めなかった。肝炎例は救命率77.2%であったが、非肝炎例は51.9%であった。なお,肝移植は昏睡型急性型、LOHFで1例ずつ実施されていた.急性肝不全の死亡率は28.7%であった。全死亡32症例の死因は肝不全死20症例(非昏睡型8例,昏睡型12例)に対し合併症死12症例(非昏睡型9例,昏睡型3例)であり、特に非昏睡型では合併症死が52.9%と高率であった。非肝炎例では合併症死は78.6%と高率であった。解析には含めなかったが、アルコール性は33例で、84.8%がacute on chronic型であり、救命率は78.8%であった。【結語】1)肝炎例の救命率と比較し、非肝炎例では著明に低値だった。2)肝炎に分類されない、循環不全などの急性肝不全では、死因として合併症の頻度が高く、肝不全の程度は軽度だった。 |