セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 肝PD14-4:

当高度救命救急センターに搬送された劇症肝炎以外の急性肝不全症例の検討

演者 小野寺 誠(岩手医大・救急医学)
共同演者 井上 義博(岩手医大・救急医学), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】当施設における劇症肝炎を除く急性肝不全症例の予後因子を検討する。【方法】2003年より2011年までの期間に搬送された内因性疾患および急性中毒患者で「肝機能障害とPT-INR値1.5以上を示す急性肝不全」症例のうち、肝炎ウイルス感染を起因とする症例および心肺停止後症例を除いた30例を対象とした。成因の内訳はうっ血性心不全9例、敗血症による多臓器不全8例、慢性腎不全の急性増悪3例、消化管出血3例、急性中毒3例(アセトアミノフェン、ドクツルタケ、除草剤)、その他4例である。対象を生存群19例(男14例、女5例、平均年齢69±24歳)と死亡群11例(男7例、女4例、平均年齢71±14歳)に分け、搬入時のGlasgow Coma Scale (GCS), 総ビリルビン, AST, ALT, LDH, アンモニア値, PT-INR, 急性期DICスコア, 多臓器不全の指標としてSequential Organ Failure Assessment (SOFA) スコア、抗凝固剤や抗血小板薬の内服の有無について比較検討した。【成績】GCSは生存群12.2±4.5, 死亡群5.3±4.8と死亡群で有意に低下していた(p<0.01)。PT-INRは生存群2.7±1.2, 死亡群2.0±0.7と生存群で有意に延長しており、この原因として抗凝固剤服用患者が生存群に有意に多い(p<0.05)ことが考えられた。抗血小板薬の内服の有無や急性期DICスコアは2群間に有意差を認めなったが、SOFAスコアは生存群5.6±3.9に対し死亡群10.0±4.9と有意に高値であった(p<0.05)。血液浄化療法を施行した症例は8例。死因は多臓器不全死5例、心不全死2例、出血性ショック死2例、その他1例であった。【結論】劇症肝炎を除く急性肝不全症例のうち、搬入時のGCSが低い症例とSOFAスコアが高い症例で予後不良であった。
索引用語 急性肝不全, 予後