セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 消PD14-6指:

B型肝炎ウイルス再活性化による劇症肝炎の現状

演者 井戸 章雄(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 桶谷 眞(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大大学院・消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】劇症肝炎および遅発性肝不全の全国調査(2005~2009年)における、B型劇症肝炎およびHBV再活性化による劇症肝炎例の実態について検討した。
【方法】2005~2009年に劇症肝炎および遅発性肝不全の全国調査に登録されたB型劇症肝炎のうち、判定不能例を除いた163例(急性感染91例、キャリアからの急性発症35例、HBV再活性化37例)を対象として、B型劇症肝炎の臨床背景、HBV再活性化例の基礎疾患と治療について検討した。
【成績】(1) HBV再活性化例は高齢で、亜急性型および遅発性肝不全が多く、予後も不良であった。またHBV-DNA量が高値で血清ALT値が低く、総ビリルビン値は高値でプロトロンビン時間 (%)が延長していた。(2) HBV再活性化例37例のうち、HBs抗原陽性キャリアからの再活性化は20例で、17例がde novo B型肝炎であった。de novo B型肝炎例は高齢で全例が亜急性型または遅発性肝不全であった。HBs抗原陽性例の55%、de nove B型肝炎例の94%が血液悪性腫瘍で、非ホジキンリンパ腫またはMALTリンパ腫はそれぞれ50%、76%を占めていた。血液悪性腫瘍以外では、HBs抗原陽性例で固形癌15%、膠原病10%、関節リウマチ20%であり、de nove B型肝炎例では固形癌が1例みられた。基礎疾患に対する治療としてはリツキシマブ併用化学療法がHBs抗原陽性例の45%、de nove B型肝炎例の76%に施行されていた。その他、ステロイド、アントラサイクリン系の化学療法剤、メソトレキセートなどの投与例でHBV再活性化が認められた。
【結論】リツキシマブ併用化学療法以外の免疫抑制・化学療法でもHBV再活性化による劇症肝炎進展例がみられた。悪性リンパ腫以外の血液悪性腫瘍、固形癌および膠原病領域におけるHBV再活性化の実態を明らかにする必要性が考えられた。
索引用語 HBV再活性化, 劇症肝炎