セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 肝PD14-7指:

B型急性肝炎の病型分類

演者 安井 伸(千葉大大学院・腫瘍内科学DELIMITER帝京大ちば総合医療センター・光学診療部)
共同演者 藤原 慶一(千葉大大学院・腫瘍内科学), 横須賀 收(千葉大大学院・腫瘍内科学)
抄録 【目的】B型急性肝炎には急性感染、キャリア急性増悪、de novo肝炎など様々な病態が包括され、各病型において治療方針も異なり、適切な治療を行うためには病型の鑑別が不可欠である。今回、我々は各病型における臨床学的特徴を検討し、鑑別の要点について考察した。【方法】2000年から2009年までに当科で経験したB型急性肝炎症例(急性感染例:A群、キャリア急性増悪例:C群)を対象として検討を行った。HBs抗原陽性かつIgM-HBc高力価陽性例を急性感染と定義し、発症前6ヶ月間HBs抗原陽性もしくはHBs抗原陽性かつHBc抗体高力価陽性、IgM-HBc抗体低力価陽性または陰性例をキャリア急性増悪と定義した。【成績】対象症例は50例(A群27例、C群23例)で非重症22例、重症11例、劇症17例であり、12例が死亡した。発症から入院までの期間は19±30日であった。入院時の検査成績はALT 2591±3348 IU/L、T-Bil 9.6±7.7mg/dl、PT 49±32%で、HBV-DNAは47例で陽性、IgM-HBc抗体は33例で陽性であった。抗ウイルス薬は42例で投与され(LMV34例、ETV6例、LMV+ADV2例)、19例でステロイドによる免疫抑制療法が行われた。A群とC群の比較では両群において重症度、死亡率に統計学的有意差は認めなかったが、A群において発症から入院までの期間が有意に短く(p=0.01)、ALT値が有意に高値であった(p<0.01)。またC群においてHBV-DNAが6log copy以上となる例が有意に多かった(p=0.02)。【結論】B型急性肝炎の病型鑑別において、従来のHBs抗原、HBc抗体価、IgM-HBc抗体価に加えてHBV-DNA量が鑑別の一助となる可能性が示唆された。キャリア急性増悪例ではHBVの自己排除が困難であり抗ウイルス薬投与が必須であるが抗ウイルス薬効果発現までのタイムラグを乗り切るためには免疫抑制療法が必要となると考えられる。
索引用語 急性肝不全, B型急性肝炎