抄録 |
【はじめに】小腸悪性リンパ腫は比較的稀な疾患であり、特に消化管穿孔をきたすと予後不良となる.悪性リンパ腫の小腸病変による消化管穿孔をきたした3症例を経験したので報告する。【症例1】:82歳女性。突然の腹痛、腹部膨満感を訴え受診した.CTにて消化管穿孔と診断され緊急開腹手術となった。treitz靭帯より20cm肛門側の空腸に5mm大の穿孔を伴う腫瘤を認め,さらに30cmと60cmにも腫瘤を認めた.3箇所の病変部を含めて小腸部分切除術を施行した.術後病理診断で小腸悪性リンパ腫diffuse large B-cell typeと診断された.術後3年経過し化学療法継続中である.【症例2】:58歳男性.悪性リンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue type)に対して外来化学療法中であった.最終治療から2ヶ月後、突然の腹痛と吐血が出現した.CTでは小腸,結腸に悪性リンパ腫の病変と思われる壁肥厚および内腔の不整な拡張像を認め,free airと腹水の貯留を認めた.腸管悪性リンパ腫穿孔と診断し緊急手術となった.開腹時,全小腸にわたり棍棒状に腫大し、壁が菲薄化した結節性の病変を多発性に認めた.穿孔部はtreitz靭帯より70cm肛門側に認め,穿孔した病変部を含め40cmの小腸切除を行った.術後病理診断ではdiffuse large B-cell typeと診断された.【症例3】:77歳男性。悪性リンパ腫(diffuse large B-cell type)に対し化学療法後の再発で放射線治療中であった.最終治療の3ヶ月後に、突然腹痛をきたし黒色便の排出を認めた。腹部CTでfree airを認め腸管穿孔疑いにて緊急手術を行った.開腹時,treitz靭帯より40cmの部位に腫瘤を認め,同部に穿孔を認めた.その他の小腸にも数カ所同様の結節を認めた.穿孔部の小腸部分切除術を施行した.術後病理診断でdiffuse large B-cell typeと診断された。【考察】小腸悪性リンパ腫は診断が困難なことも多く,小腸病変を認識していない悪性リンパ腫の治療中に穿孔を発症することがある.また多発性病変の症例もみられ,切除範囲の決定には苦慮することも多い.多発性病変をもつ穿孔した小腸悪性リンパ腫の3症例を経験したので報告する. |