セッション情報 一般演題

タイトル 61:

偽性腸閉塞症に対してメトロニダゾール内服が奏功した全身性強皮症の1例

演者 王寺 裕(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
共同演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 姫野 祐一郎(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
抄録 全身性強皮症の約50%で腸管運動機能障害による偽性腸閉塞が報告されている。中心静脈栄養や成分栄養、腸管運動調節薬の有効性が報告されているが、再燃を繰り返す症例もある。今回我々はメトロニダゾール内服が偽性腸閉塞に奏功した全身性強皮症の1例を経験したので報告する。症例は65歳男性。虫垂炎で手術の既往がある。40歳時にRaynoud病を指摘され、60歳頃より腹部膨満を自覚していた。63歳時に腹痛と嘔吐が出現し当科緊急入院となった。腹部造影CTにて鏡面形成を伴う小腸の拡張を認め腸閉塞と診断した。絶食補液にて軽快したが、ゾンデ法小腸X線検査にて空腸は著明に拡張し、密に収束した細い皺襞はcoiled-spring appearanceを呈していた。さらにRaynoud症状、爪上皮内出血点、手指及び前腕の皮膚硬化所見を認め、抗核抗体は1280倍、抗セントロメア抗体は203倍と高値であった。上部消化管内視鏡検査にて逆流性食道炎を認めたが、肺線維症や心不全、腎障害、四肢関節拘縮は認めなかった。以上より限局型全身性強皮症による偽性腸閉塞と診断した。食事再開後は緩下剤と腸管運動調節薬(TJ-100、モサプリド)の内服で便通を調節し退院となった。しかしその後も腸閉塞症状を繰り返し、65歳時に3回目の入院となった。保存的治療で一時的に軽快するが流動食の再開で容易に再燃し、脱水による腎前性腎不全も合併した。今回のみで入院中の再燃による減圧チューブの挿入は3回にも及んだ。そこで従来の治療にメトロニダゾール1日750mgの内服を先行投与したところ、食事を再開しても再燃なく退院することができた。以後はメトロニダゾールの早期投与により68歳の現在まで重篤な再燃はない。メトロニダゾールは腸内細菌叢に対する抗菌作用と伴に、未知の抗炎症作用が推定されている。偽性腸閉塞に対する保険収載はないが、副作用も比較的少なく安価であり、治療選択肢として有用と考え報告した。
索引用語 全身性強皮症, 偽性腸閉塞