セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研88:

診断に苦慮した肝血管筋脂肪腫の1例

演者 伊地知 徹也(鹿児島共済会南風病院肝臓内科)
共同演者 中野 正子(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 柴籐 俊彦(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 迫 勝巳(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 小森園 康二(鹿児島共済会南風病院肝臓内科), 田中 貞夫(病理)
抄録 【症例】44歳の女性。2010年6月、倦怠感と体重減少を主訴に近医を受診。軽度肝機能障害を指摘された。7月、精査目的で当院紹介受診した。HBs抗原、HCV抗体はともに陰性。腫瘍マーカーも正常域であった。腹部エコーでは、肝S8に径5cm大の内部不均一で境界不明瞭の高エコー性腫瘤を認め、また造影CTでは多房性嚢胞性病変が疑われた。嚢胞壁や隔壁、周囲肝実質は早期より増強効果を認めたが、門脈相、後期相では造影効果は遅延しなかったことから、肝膿瘍、肝血管腫、転移性肝腫瘍が疑われた。PETでは肝S8の病変部に一致する異常集積はみられなかった。造影MRIでは腫瘤内部はin,out of phaseで低信号、T2強調画像で高信号。腫瘤辺縁部はin,out of phaseで高信号、T2強調画像で著明に高信号であった。脂肪を示唆する部分は認められなかった。また、拡散強調画像では腫瘤部に高信号を認め、出血が疑われた。エコーガイド下に施行した狙撃生検では、小血管周囲の出血や、成熟脂肪細胞、好酸性の胞体をもつ類上皮様平滑筋細胞の混じった線維性組織の増生を認めた。免疫染色でvimentin、smooth muscle actin及びHMB45が陽性であり、血管筋脂肪腫と診断した。検体に悪性を疑う所見はなかった。【考察】診断に苦慮した肝血管筋脂肪腫の一例を経験した。血管筋脂肪腫は日常腎に認められるが、本症例のように肝に認められるのは稀である。CTで多房性嚢胞性腫瘤がみられ、肝膿瘍や肝血管腫、転移性腫瘍が疑われた。傍大動脈左側リンパ節の腫大が目立ち、悪性腫瘍でないことが否定できなかったため、PET及び狙撃生検を行い、確定診断をつけることとした。MRI所見は非典型的であり、脂肪成分に乏しい腫瘍であることが分かった。血管筋脂肪腫は血管成分、平滑筋成分、脂肪成分からなり、腫瘍の構成成分比率によって、画像所見が異なってくることを考慮しなくてはならず、確定診断には肝生検による免疫染色が重要である。
索引用語 肝血管筋脂肪腫, HMB45