セッション情報 一般演題

タイトル 111:

多発肺転移巣が自然退縮した肝細胞癌の2例

演者 小柳 年正(飯塚病院肝臓内科)
共同演者 田尻 博敬(飯塚病院肝臓内科), 矢田 雅佳(飯塚病院肝臓内科), 千住 猛士(飯塚病院肝臓内科), 本村 健太(飯塚病院肝臓内科), 増本 陽秀(飯塚病院肝臓内科)
抄録 【はじめに】著明な多発肺転移巣が自然退縮した肝細胞癌の2例を報告する。【症例1】65歳男性。大酒家で喫煙家。1992年近医にてC型慢性肝炎と診断されたが放置。1999年10月、近医の腹部超音波検査で多発肝腫瘍を指摘され当科初診。肝S8最大腫瘍径5 cmの他、多発肝細胞癌を認めTACE施行。以後2000年1月、7月、12月、2001年4月にTACE施行。2001年5月、咳嗽、発熱を自覚し、胸部X線撮影およびCTにて多発肺転移を認めた。以後喫煙を止め、発熱に対しジクロフェナクナトリウム投与による対症療法を施行。肝細胞癌に対しては積極的治療を行わず経過観察したところ、同年7月のCTで肺転移巣は著明に退縮していた。PIVKA-II値は2001年3月7,800 mAU/ml、4月21,200 mAU/mlと上昇したが、肺転移巣の退縮に伴い同年6月104 mAU/ml、7月29 mAU/mlと著明に低下した。咳嗽が改善したため8月より喫煙を再開。肺転移退縮のため肝細胞癌治療を再開したが、2003年4月敗血症、DICを合併し死亡した。【症例2】78歳女性。1991年近医でC型慢性肝炎と診断され、1992年7月よりインターフェロン治療を受けたが無効であった。1993年12月、肝S8に径1.5 cmの肝細胞癌が発症し当科初診にてTACE施行。2005年2月、肝S8に径1 cm弱の肝細胞癌再発を認め肝部分切除術施行。その後多発再発をきたし2006年7月、11月、2008年2月、8月、2009年6月、12月にTACE施行。2010年1月以降、肺転移が急速に進展したため積極的治療を行わず経過観察したところ、AFP値は2010年1月2,020 ng/ml、5月16,807 ng/mlと上昇したが、6月824 ng/ml、8月34 ng/mlと急速に低下した。2010年7月CTを撮影したところ、肺転移巣は著明に退縮し肝内の肝細胞癌病巣も縮小していた。2010年4月より健康食品の核酸を摂取したが、1月以降新たな投薬はない。【考察】肝細胞癌自然退縮の機序として、腫瘍の急速な増大による乏血および乏酸素状態、免疫系の作用、飲酒や喫煙の影響、NSAIDのCOX-2阻害作用などの関与が想定されているが詳細は不明である。これらにつき文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝細胞癌肺転移, 自然退縮