セッション情報 | 一般演題 |
---|---|
タイトル | 23:沖縄におけるピロリ菌の遺伝子解析と消化管病変 |
演者 | 松成 修(大分大学医学部医学系研究科 環境・予防医学講座) |
共同演者 | 綿田 雅秀(大分大学医学部医学系研究科 環境・予防医学講座), 塩田 星児(大分大学医学部医学系研究科 環境・予防医学講座), 花田 克浩(大分大学医学部医学系研究科 環境・予防医学講座), 金城 福則(琉球大学医学部第一内科 光学医療診療部), 山岡 吉生(大分大学医学部医学系研究科 環境・予防医学講座) |
抄録 | 【目的】Helicobacter pylori (H.pylori)のcagA遺伝子は、毒性の強い East Asian typeと比較的毒性の弱いWestern typeに分類される。日本人におけるcagAのタイピングでは、ほとんどがEast Asian typeである。このため、世界において日本の胃がんの有病率が高いとも示唆されている。日本における胃がん死亡率は、全国平均で12.7(人口10万対)であるが、都道府県別に見ると、沖縄県は6.8と全国で最も胃癌が少ない。Satomiらは、沖縄でのピロリ菌24株の解析にて、沖縄にはWestern type cagAを持つ菌が多く存在することを示した(JG2006)。今回我々は、琉球大学にて採取培養され凍結保存された255株のピロリ菌を用いて、cagA、vacA遺伝子の遺伝子解析を行い、消化管疾患との関連性を検討した。 【方法】琉球大学医学部附属病院にて内視鏡検査を受けた患者より採取され、H.pyloriの培養に成功し凍結保存された255株を用いた。これらの菌株を再度培養しDNAを抽出した。再培養されなかったものについては、凍結保存液より直接DNAを回収した。これらについて、cagAタイピングvacAのタイピングを行った。 【成績】cagAタイピングでは、East Aisan type 170(67.2%)、Western type 43(17%)、cagA陰性菌37(14.6%)であった。cagA陰性菌では、全ての菌がvacA m2/s2であった。Western type cagA 菌では、多くの菌がvacA m2/s1(32/44)であり、East Asian type cagA菌ではほとんどがvacA m1/s1(151/165)であった。疾患とcagAのタイピングでは、Western type cagA菌には十二指腸潰瘍が多く(24/43)、cagA陰性菌には胃炎のみの患者が多かった(18/37)。 【結論】沖縄にはWestern type cagA菌が多く存在すると報告されていたが、cagA陰性菌も多く存在することが判明した。Western type cagA菌とcagA陰性菌にそれぞれ胃がんが1例存在し、これらをnon-East Asiantype cagAとまとめた場合、胃がん率2/80(2.5%)は、East Asian type cagAの胃がん率17/170(10%)と比較し有為(p=0.036)に低かった。沖縄では、Western type cagA 菌だけでなく、cagA陰性菌が多いこともあり、胃がんの発生が低いと考えられた。 |
索引用語 | ピロリ菌, cagA |