セッション情報 ワークショップ2「B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策」

タイトル WS1-07:

B型肝炎ウイルス関連マーカー陽性血液疾患に対する造血幹細胞移植後のウイルス学的経過の検討

演者 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科)
共同演者 上野 新子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科), 衛藤 徹也(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 血液病科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 肝臓科)
抄録 【目的】 近年、HBV関連マーカー陽性患者に対する抗癌剤や免疫抑制剤投与によりHBV再活性化やde novo B型肝炎が報告され問題となっている。今回、当院におけるHBV関連マーカー陽性血液疾患に対する造血幹細胞移植後のウイルス学的経過を検討した。
【方法】 対象は2003年4月から2010年3月までの間に当院で同種造血幹細胞移植を施行された324例。男性184例、女性140例で平均年齢は44.1歳(16~72歳)であった。移植前後のHBVマーカー、核酸アナログ製剤予防投与の有無、移植後のHBV再活性化、肝炎の有無について検討した。
【結果】 移植前HBsAg陽性者は測定された316例中11例(3.5%)で、DNAはそのうち3例で陽性、8例で検出感度未満であった。核酸アナログが予防投与されたのは10例であった。ラミブジンが予防投与された患者のうち1例で移植前は陰性であったDNAが移植後約2か月で陽性化しALTの上昇をみとめたため耐性ウイルスの出現と考えアデホビルを追加投与した。HBsAg陰性かつHBcAb陽性 and/or HBsAb陽性者は188例中43例(22.9%)で、移植前のDNA陽性例はなく34例は陰性、9例は未測定であった。43例のうち核酸アナログが予防投与された3例からはDNAの陽性化はなかった。予防投与なく移植前DNA未測定の1例で移植後14ヶ月後に肝炎を発症し、HBsAg陽性、DNA陽性となりde novo 肝炎と考えた。エンテカビル投与にてウイルス量は検出感度以下となったが、慢性GVHDのコントロールがつかず死亡した。(43例中1例(2.3%))。また移植前にHBsAg、HBcAb、HBsAbすべて陰性であった1例、HBsAg陰性(HBcAb、HBsAbは未測定)であった1例で移植後に肝障害を認めHBsAg、DNAを測定したところ陽性であった。
【結論】 造血幹細胞移植後にde novo 肝炎の発症を1例認めた。de novo 肝炎は重篤な転帰をとる場合もあるためHBVマーカー陽性者では注意深い経過観察が必要である。ガイドラインが作成され移植前のHBVマーカーがほとんどの症例で検査されるようになってきているが、その後紹介元の血液内科に逆紹介される例も多く病病連携が重要と考えられた。
索引用語 B型肝炎, 造血幹細胞移植