| 共同演者 |
江口 有一郎（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 西井 緑（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 多胡 雅毅（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 藤原 元嗣（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 松永 諭（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 吉岡 経明（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 副島 修（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部）, 江村 正（佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター）, 鶴岡 ななえ（佐賀大学医学部附属病院 内科学）, 岩切 龍一（佐賀大学医学部附属病院 内科学）, 藤本 一眞（佐賀大学医学部附属病院 内科学）, 小泉 俊三（佐賀大学医学部附属病院 総合診療部） |
| 抄録 |
【症例】60歳代、男性。【主訴】腰痛、全身倦怠感【現病歴】平成22年3月から腰痛が出現し、近医整形外科での対症療法でも増悪するため同年6月当院へ来院。【既往歴】平成16年10月に胃癌（signet cell with poorly differentiated adenocarcinoma,type3,T2(ss),N2,H0,P0,CYX,M0; StageIIIa）と大腸癌（Well differentiated adenocarcinoma, mp, ow(-), aw(-), N(-), P0, H0, M(-); StageI）に対し胃全摘術＋D2と横行結腸切除術＋D2を受け、術後4ヶ月間のTS-1による化学療法が施行された。その後は半年毎の定期的な血液検査と胸腹部造影CT、一年毎の大腸内視鏡検査で経過を観察されていた。術後5年が経過した平成21年10月まで無再発であり、同月で当院での経過観察を終了した。【入院時現症】身長166.4cm、体重61kg（2ヶ月で4～5kg減）。身体所見は、眼瞼結膜は貧血様で、左下腹部に圧痛を認め、右臀部の強い圧痛を認めた。血液検査：Hb 7.4g/dl、TP 6.5g/dl、Alb 3.0g/dl、ALP 4643IU/l、CEA 24.7ng/ml、CA19-9 60198U/ml。画像検査：胸腹部造影CTで肺、肝臓、腹腔内リンパ節への多発転移を認め、MRIで仙骨、腸骨への多発骨転移を認めた。上部消化管内視鏡検査で食道－空腸吻合部に不整潰瘍を認め、同部位の生検および腸骨の腫瘤からの針生検で印環細胞を含む、低分化腺癌を認めた。臨床経過から胃癌再発のStageIVと診断した。【入院後経過】全身状態の急速な悪化から化学療法は実施できず緩和ケアを行い、第10病日に永眠された。【考察】Type3進行胃癌に胃全摘＋D2廓清、術後化学療法後５年間の無再発期間を経て、急速に全身性転移を来たした。印環細胞癌や未分化癌は標準的な術後管理のもと比較的長期間の無再発期間を経ても再発を来す症例が稀ではあるが報告されており、20年後の再発も報告されている。また再発は比較的急速な進展を来す報告が多く、再発後の予後は不良とされる。胃印環細胞癌の治療後の経過観察の時期や期間、定期検査の内容など、今後の術後管理のあり方を考える上で教訓となる一例であった。 |
