セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研80:

結婚41年後に感染したHCV夫婦間感染の一例

演者 加藤 香織(新日鐵八幡記念病院 消化器科)
共同演者 山下 尚毅(新日鐵八幡記念病院 消化器科), 大穂 有恒(新日鐵八幡記念病院 消化器科), 梶原 英二(新日鐵八幡記念病院 消化器科)
抄録 結婚後41年経過して夫から妻へのHCVの夫婦間感染が成立した1例を経験した。
症例は67歳、女性。夫は68歳、C型慢性肝炎(ジェノタイプIb、高ウイルス量)で当院外来フォロー中である。53歳まで毎年の健診や献血での肝障害やC型肝炎の指摘はなかった。2009年7月7日より全身倦怠感、食思不振出現し7月13日当院入院。AST 1514 IU/L、ALT 2011 IU/L、T-Bil 2.0 mg/dl。HCV抗体は2.77 s/coと低力価陽性で、HCV-RNA 7.5 logIU/ml、HCVジェノタイプ1b。入院後T-Bilは11.1 mg/dlまで上昇したがその後徐々に低下し、8月1日AST 113 IU/L、ALT 259 IU/L、T-Bil 2.3 mg/dlと改善を認めたため外来にて経過観察とした。その後ALTは多峰性に変動し、HCVRNAは<1.2+ logIU/mlまで低下するも11月には4.0 logIU/mlと再上昇したため、11月6日より12週間のペグインターフェロンα2a 180μg単独治療を行い、著効に至った。
本症例はその後のHCV抗体価の上昇および発症4ヶ月後の肝生検でA2F0であったことからHCV初感染による急性肝炎と考えられた。詳細な病歴聴取から夫との性交渉による感染経路が考えられた。夫婦の保存血清を用いてHCV NS5B領域の339塩基を増幅し、PCR産物をダイレクトシクエンスにより塩基配列を決定した結果、系統樹解析で100%一致したことから夫婦間感染と判断した。
近年C型急性肝炎の高齢夫婦間感染例の報告が散見される。高齢夫婦間感染には加齢に伴う免疫低下や粘膜の脆弱性など生体側因子の関与が考えられており、HCV感染率が高い高齢者では性交渉によるHCV感染の予防対策の啓蒙が必要と思われる。
索引用語 HCV, 夫婦間感染