セッション情報 一般演題

タイトル 171:

脾破裂による出血性ショックを契機に診断し得た自己免疫性膵炎の1例

演者 藤山 俊一郎(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター), 上川 健太郎(済生会熊本病院 消化器病センター), 浦田 淳資(済生会熊本病院 消化器病センター), 近澤 秀人(済生会熊本病院 消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 富安 真二朗(同 外科センター), 金光 敬一郎(同 外科センター), 神尾 多喜浩(同 病理)
抄録 自己免疫性膵炎は、初発症状として閉塞性黄疸や糖尿病、膵炎で発症する例が多いが、今回脾破裂による出血性ショックで発症した症例を経験したので報告する。症例は61歳男性。既往は腎細胞癌の手術歴のみで他の基礎疾患はない。平成21年7月上旬頃より左上腹部痛を自覚していたが経過観察していた。同月下旬、仕事中に急激な腹痛と嘔気を認め、ショック状態で当院へ救急搬送された。腹部は著明に膨隆しており、腹部超音波検査では大量腹水を認めた。腹腔内出血を疑い腹部造影CT検査を施行したところ、脾周囲に造影剤の血管外漏出を認めた。特発性脾破裂による腹腔内出血を疑い緊急手術が施行された。術中所見では、脾臓の皮膜の一部が破綻しておりこの部位からの出血が確認された。脾臓と近接する膵実質が腫瘍を思わせるほど非常に硬く、術後に膵の精査が必要と考えられた。止血を目的とした緊急手術であったため、脾臓摘出術のみを行った。摘出標本の病理学的検索で、脾臓の鬱血と脾門部間質の毛細血管増生、炎症細胞の浸潤を認めた。入院時腹部CTで膵実質のソーセージ様腫大や分葉構造の消失、脾静脈閉塞といった所見があり、背景に自己免疫性膵炎の可能性を疑った。免疫組織学的に更なる検索を行ったところ、IgG4陽性の形質細胞を優位に認めた。その後、高γ-グロブリン血症、高IgG血症、高IgG4血症、自己抗体陽性が判明し、膵画像検査でも膵腫大と主膵管狭細像を認め、日本膵臓学会の自己免疫性膵炎診断基準2006に基づき自己免疫性膵炎と診断した。全身状態の改善後にプレドニゾロン40mg/dayより投与開始し、現在5mg/dayで維持投与中である。翌年5月のERCPでは膵管の狭細化は著明に改善していた。本例の病態は、自己免疫性膵炎により脾静脈へ炎症が波及し脾静脈閉塞が惹起された結果、脾実質内に鬱血が起こったことで、内圧上昇に耐えきれず被膜が一部破綻し脾破裂に至ったと推測される。近年、IgG4関連硬化性疾患が注目されているが、本例のように脾破裂を契機に診断された自己免疫性膵炎は過去に報告例がなく、貴重な症例と考え文献的考察を加え報告する。
索引用語 自己免疫性膵炎, IgG4関連硬化性疾患