セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
---|---|
タイトル | 研53:膵癌との鑑別に難渋した腫瘤形成性慢性膵炎の一例 |
演者 | 中嶋 梨沙(熊本大学消化器外科) |
共同演者 | 高森 啓史(熊本大学消化器外科), 堀野 敬(熊本大学消化器外科), 田中 洋(熊本大学消化器外科), 中原 修(熊本大学消化器外科), 阿部 真也(熊本大学消化器外科), 別府 透(熊本大学消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学消化器外科) |
抄録 | 【はじめに】膵癌治療における手術の高侵襲性や化学療法導入の観点から、膵腫瘤性病変に対する治療前の確定診断は重要である。今回、膵癌の診断で紹介された腫瘤形成性慢性膵炎の1例を報告する。【症例】患者は56歳、男性。2010年7月中旬に全身倦怠感および黄疸を認め、某医を受診した。血液生化学検査上、総ビリルビン値が4.9mg/dlで、画像上、Stage4a (T4N2M0)膵癌の診断で、精査加療目的で当院紹介入院となった。腹部CTにて膵頭部に約40mm大の造影効果に乏しい腫瘤性病変を認め、同部に一致してSUVmax 3.9のFDGの異常集積を認めた。腹部血管造影では、脾静脈は閉塞し、上腸間膜静脈はその分枝に至る全周性の不整な狭小化を呈し、borderline resectable症例と考えられた。一方、MRCPでは、腫瘤部位に一致した膵内胆管の狭窄を呈していたが、尾側膵管の拡張は認めなかった。ERPでは、膵頭部において主膵管は不整な狭小化像を呈していたが途絶はなく、尾側膵管の拡張は明らかではなかった。EUSでは、膵頭部の病変は境界不明瞭な線状高エコーを伴う低エコー病変として描出された。EUS-FNAでは、 悪性細胞は認めず(Class I)、異形のない導管上皮、線維性間質およびわずかなリンパ球浸潤を認め、形質細胞の浸潤はごく僅かであった。尚、腫瘍マーカーは、いずれも基準値内であった。免疫グロブリン検査ではIgG 1081mg/dl、IgG4 111mg/dlと基準値を僅かに上回るのみで、リウマチ因子も陰性であった。また、入院経過中に黄疸は改善し、総ビリルビン値は0.9mg/dlと正常値化した。以上の所見から腫瘤形成性慢性膵炎と判断し、厳重に経過観察を行うこととした。【まとめ】膵腫瘍性病変に対する癌の存在を否定する確定診断は困難であり、治療を行わない場合には厳重な経過観察が必要となるが、治療前の病理診断を含めた総合的診断の重要性が示唆された。 |
索引用語 | 腫瘤形成性膵炎, 膵癌 |