セッション情報 ワークショップ2「B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策」

タイトル WS1-08:

HBs抗原陰性HBc抗体陽性悪性リンパ腫におけるB型肝炎再活性化の後方視および前方視的検討

演者 福島 伯泰(佐賀大学血液・腫瘍内科)
共同演者 水田 敏彦(佐賀大学肝臓内科), 末岡 榮三朗(佐賀大学附属病院輸血部), 木村 晋也(佐賀大学血液・腫瘍内科)
抄録 【背景】造血器悪性腫瘍は分子標的療法が最も効果的に働く分野である。特に悪性リンパ腫に用いられるリツキシマブはその代表的な薬剤であり現在では標準治療として用いられ劇的に予後を改善している。しかし使用期間が長くなるにつれて新しい問題点も浮かび上がってきた。その一つがリツキシマブにおけるB型肝炎ウイルスの再活性化である。HBs抗原陽性だけでなく既往感染者でも劇症化にいたる肝炎を認めており、肝炎阻止の対策を講じることは急務である。近年免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインが提案されているが、それを支持するevidenceはいまだ乏しいのが現状である。 【方法】悪性リンパ腫に対するB型肝炎再活性化の検討を後方視、前方視的に検討した。2003年から2008年にかけ悪性リンパ腫127例にHBs抗原、HBc抗体を測定し48例(37.8%)がHBs抗原陰性HBc抗体陽性であった。これらのうち24例は前方視試験として1月毎のHBs抗原。肝機能検査、3月毎のHBV-DNA測定を行った。 【結果】48名のうち2例がB型肝炎再活性化を認めた。1例はde novo肝炎を生じエンテカビル投与により肝機能の改善を認めた。1例は前方視試験登録症例で化学療法終了3月後にHBV-DNAが検出されたが、エンテカビル投与により肝炎の併発を認めなかった。両者ともにリツキシマブの使用歴および長期かつ強度の化学療法を受けていた。 【考察】リツキシマブや強力な化学療法はB型肝炎再活性化の強いリスクファクターであり、ガイドラインで示される対応は現時点ではreasonableと思われる。しかしながら、再活性化を起こす頻度や全ての抗癌剤に同じような対応をすべきは議論のあるところであり、さらなるevidenceを構築するためにも今後も質の高い臨床試験を行う必要がある。
索引用語 HBV再活性化, 悪性リンパ腫