| 抄録 |
【症例】34歳、男性【主訴】全身倦怠感【既往歴】16歳時に肝障害を指摘されたが原因不明【現病歴】約2週間前から発熱と頭痛を自覚し近医を受診して感冒の診断で投薬を受けていた。以後も38度台の発熱が持続し下痢も出現したため当科外来を受診し、採血で肝障害(GOT181IU/l,GPT324IU/l)を指摘された。以降外来で1週間経過観察したが、発熱と全身倦怠感のため仕事ができず入院となった。【生活歴】2人兄弟の次男 妻・3歳の娘と3人暮らし 性交渉は妻以外とあり(風俗店に行ったことあり。同性パートナーなし)【嗜好歴】喫煙20本/日 飲酒なし【常用薬】なし【入院時身体所見】眼球結膜の黄染なし 皮疹なし 表在リンパ節腫脹なし 腹部は平坦軟で圧痛なし 右季肋下に2横指肝を触知 脾臓は触知せず【入院時検査所見】WBC5800/μL(異型リンパ球6%),PLT21.6万/μL,GOT258IU/l,GPT500IU/l,LDH538IU/l,ALP558IU/l,γGTP103IU/,TP6.0g/dl,Alb3.3g/dl,T-Bil0.4mg/dl,PT%91%,HBs抗原(-),HBs抗体(-),HCV抗体(-),HCV核酸定量未検出,梅毒定性(-),EBV抗VCA-IgG320倍,EBV抗VCA-IgM10倍未満,EBV抗EBNA抗体10倍未満,CMVIgG(+)7.7,CMVIgM(+)7.64,白血球中CMV抗原アンチゲネミア法(+),CD4 846/μL,HIV-RNA(-),腹部超音波検査で肝は慢性肝疾患パターンなし、肝脾腫なし。肝内に粗大病変を認めず。【入院後経過】CMV抗体・CMV抗原陽性とEBNA陰性・EBV抗VCA-IgG陽性よりCMVとEBV共感染による急性肝炎と考えた。全身状態は比較的良好であったため安静のみで経過観察とした。重症肝炎への進行はなく第11病日退院となった。1か月後に採血再検したところCMVIgGは上昇していたがEBV抗EBNA抗体の上昇は認めなかった。【考察】入院当初は採血結果からCMV感染とEBVの初感染も存在すると考えてた。しかし1か月後の再検ではEBNA抗体の抗体価上昇は認めずEBVの初感染が本当に存在したかどうかははっきりしなかった。EBVやCMV感染による急性肝炎は少なくはながその診断はあいまいなことが多い。今回これらを考える上で興味深い症例を経験したため報告する。 |