セッション情報 ワークショップ2「B型肝炎ウイルスの再活性化の現状と対策」

タイトル WS1-05:

当科におけるde novo B型肝炎の現状と対策

演者 永濱 裕康(熊本大学大学院 消化器内科学)
共同演者 田中 基彦(熊本大学大学院 消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大学大学院 消化器内科学)
抄録 【背景と目的】化学療法を受けたB型肝炎既往感染症例や、HBc抗体陽性ドナーからの生体肝移植(LDLT)症例では、まれにB型肝炎の再燃が問題となる。今回、我々は当院における化学療法後ならびにLDLT症例でのde novo B型肝炎において、発症とその後の経過、問題点、治療について検討した。
【対象と経過】当院において平成19年からの3年間でB型肝炎の再活性化を認めた4症例のうち、1例は化学療法と自家末梢血幹細胞移植を行った症例、残り3例はHBc抗体陽性ドナーからのLDLT症例であった。症例1) 49歳男性。悪性リンパ腫に対する8クールのR-THP-CO後に寛解後が得られるも再発を認め、3クールのCHASER後に自家末梢血細胞移植併用大量化学療法施行。トランスアミナーゼの上昇ならびにHBV DNAが3.2logC.mlと上昇を認めたため、当科紹介。症例2) 68歳男性。先天性肝動静脈奇形による肝不全に対するLDLTを受け、HBIGを投与しHBs抗体を維持するも4年後にHBs抗原が陽性となり当科紹介。症例3) 55歳男性。原因不明の肝硬変に対するLDLT後にHBIGを投与するも、1年6ヶ月後にHBs抗原が陽性化したため当科紹介。症例4) 34歳女性。先天性胆道閉鎖症に対する肝門部腸吻合術をうけるも胆管炎を繰り返すため、LDLT施行。術後1年3ヶ月後に吻合部狭窄の合併症に対する加療中にHBIG投与間隔が空いたためHBs抗体力価が低下し、HBs抗原陽性となり当科紹介。いずれの症例でもエンテカビル投与によりHBVDNA量は低下し、肝炎の重症化には至らずに良好な経過が得られている。
【考察、結語】化学療法の症例に対してはB型肝炎再活性化を早急に判断し、エンテカビル投与を行う事で重症化の予防が可能である。またHBc抗体陽性ドナーからのLDLT症例では、HBIG投与だけでは再活性化を完全には阻止出来ない場合があり、その原因としてHBs抗原のescape mutantによるものが疑われた。そのため今後はHBs抗体の力価が維持されている症例においても、escape mutant の出現を念頭に入れ、HBVDNA量の測定を併せて行う必要があると考えられた。
索引用語 de novo, HBV