セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専59:

膵鉤部から骨盤腔にまで進展した重症急性膵炎後仮性嚢胞に対して、経乳頭的膵管ステント留置術が有効であった1例

演者 藤山 隆(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター)
共同演者 河邉 顕(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 植田 圭二郎(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 光安 彩(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 大橋 朋子(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 柿ヶ尾 佳奈(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 澤村 紀子(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 岡本 梨沙(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 原口 和大(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 水谷 孝弘(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 国府島 庸之(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 吉本 剛志(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 福嶋 伸良(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 福泉 公仁隆(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 原田 直彦(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 中牟田 誠(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター)
抄録 急性膵炎の合併症のひとつである膵仮性嚢胞は、保存的治療だけでは治療に難渋することが多い。今回、我々は骨盤腔にまで広範囲に進展していた重症急性膵炎後の膵仮性嚢胞に対し、経乳頭的膵管ステント留置術が有効であった1例を経験したので、文献的考察も含めて報告する。症例は61歳男性。既往歴にアルコール性急性膵炎での数回の入院歴があった、2010年3月上腹部痛が出現したため近医を受診し、急性膵炎の診断にて近医入院となった。今回の入院まで飲酒を継続していた。急性膵炎に対する保存的治療を受けるも、臨床症状、検査所見が改善しないため、発症第2病日に当科紹介入院となった。当科入院時の血液検査、腹部造影CT検査の結果、厚労省急性膵炎重症度判定基準(2008年)より重症急性膵炎(予後因子0点、CT grade2)と診断した。絶食、輸液、大量蛋白分解酵素阻害剤、抗生物質の投与を開始した。治療開始後、上腹部痛の改善を認めたが、発熱、血中膵酵素の軽度高値が持続した。第12病日に経過の腹部CT検査を施行した。膵腫大、膵周囲への炎症の波及は改善していたものの、膵鉤部から足側に骨盤腔にまで進展した膵仮性嚢胞の形成を確認した。MRCPでも膵鉤部下頭枝から嚢胞への連続性が疑われた。保存的治療を継続しながら、第30病日に施行したERCPを施行では、膵頭部主膵管下頭枝から仮性嚢胞への交通が確認された。仮性嚢胞内への膵液の流入を阻止するために、主膵管内に下頭枝を超えて膵管ステントを経乳頭的に留置した。ステント留置14日目(第43病日)の腹部CTで仮性嚢胞は著明に縮小していた。ステント留置22日目(第51病日)のERCPでは下頭枝から仮性嚢胞への交通は消失していた。その後、経口摂取を開始するも、膵炎の再燃、仮性嚢胞の増大を認めず、経過良好にて第57病日に退院となった。膵管ステントは留置後約2ヶ月後に経過良好にて抜去した。経乳頭的膵管ステント留置術は広範囲に進展した膵仮性嚢胞に対して有効な治療法のひとつと考えられた。
索引用語 膵仮性嚢胞, 膵管ステント