セッション情報 | 専修医発表(卒後3-5年) |
---|---|
タイトル | 専41:腎盂外溢流から腹腔内に炎症が波及し、S状結腸の限局性浮腫を来した1例 |
演者 | 梶本 展明(大分大学医学部 消化器内科) |
共同演者 | 内田 政広(大分大学医学部 消化器内科), 平下 有香(大分大学医学部 消化器内科), 本村 充輝(大分大学医学部 消化器内科), 安部 高志(大分大学医学部 消化器内科), 井上 邦光(大分大学医学部 消化器内科), 水上 一弘(大分大学医学部 消化器内科), 沖本 忠義(大分大学医学部 消化器内科), 村上 和成(大分大学医学部 消化器内科) |
抄録 | 症例は72歳女性。2010年7月20日の朝より38度台の発熱、左下腹部痛を認めたため近医を受診。腹部エコーにてS状結腸の壁肥厚を認めたため虚血性腸炎を疑われ、当院救命センターへ搬送された。来院時診察にて下腹部の圧痛、筋性防御、左下腹部に便塊と考えられる可動性の腫瘤を認めた。血液検査はCRP12.82mg/dlと炎症所見を認めたため、造影CT施行。S状結腸に全周性の浮腫性壁肥厚を認め、その口側に多量の便塊を認めた。骨盤腔内には腹水貯溜を認め、また腹水周囲の腹膜は肥厚しており,腹膜炎の合併が疑われた。腎臓周囲にはfluidを認め、膀胱壁は肥厚し、膀胱炎が疑われた。下部消化管内視鏡検査では、S状結腸のびまん性の粘膜浮腫状変化と一部発赤を認めるのみで、感染性腸炎、虚血性腸炎を疑う所見は認められず、腸管の浮腫状変化は腸管外からの炎症の波及と考えられた。狭窄が強く、スコープ通過困難であった。入院当日より、絶食輸液療法、抗生剤投与を開始した。左下腹部痛、発熱、血液検査の炎症所見は数日で速やかに改善した。来院前に近医にて導尿し、1リットル近い排尿を認めたエピソードがあったため、尿バルーン留置し、泌尿器科へコンサルトしたところ、2型糖尿病による神経因性膀胱と診断された。以上より、神経因性膀胱から腎盂外溢流を来たし、腹膜へ炎症が波及したと考えられた。 炎症改善後(第12病日)食事を開始したが、緩下剤にて排便良好であり、腹部症状も認めなかったため第15病日に退院とした。 腎盂外溢流から腹腔内に炎症が波及し、S状結腸の限局性浮腫を来した症例と考えられ、文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 | 神経因性膀胱, 腎盂外溢流 |