セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専40:

C型肝硬変に伴った回腸AVMの1例

演者 馬場 雅之(長崎大学腫瘍外科)
共同演者 久永 真(長崎大学腫瘍外科), 福田 大輔(長崎大学腫瘍外科), 野中 隆(長崎大学腫瘍外科), 阿保 貴章(長崎大学腫瘍外科), 福岡 秀敏(長崎大学腫瘍外科), 日高 重和(長崎大学腫瘍外科), 竹下 浩明(長崎大学腫瘍外科), 七島 篤志(長崎大学腫瘍外科), 澤井 照光(長崎大学腫瘍外科), 安武 亨(長崎大学腫瘍外科), 永安 武(長崎大学腫瘍外科), 安倍 邦子(長崎大学病院病理部), 林 徳真吉(長崎大学病院病理部)
抄録 C型肝硬変の経過中に消化管出血で発症した回腸arteriovenous malformation(AVM)の1例を経験したので報告する。患者は直腸癌術後4年、C型肝硬変を有する75歳女性である。進行する貧血と黒色便のため近医入院となり、出血シンチで右下腹部に集積を認めたものの、上部・下部消化管内視鏡検査や腹部造影CTで明らかな出血源を指摘できなかったため当院転院となった。小腸内視鏡検査でも明らかな出血源を特定することはできなかったが、血管造影で骨盤内右側に瘤状の静脈拡張を認めた。腹部造影CTでも骨盤内右側の回腸末端部に造影早期相で動脈瘤様の所見を認めたため、回腸AVMの診断で手術を行った。開腹すると腸間膜にはミミズ腫れ様に拡張した静脈がみられ、血管の増生も認められた。腹膜や子宮からも流入血管がみられ、肝硬変に伴う側副路形成が疑われた。終末回腸を60cm切除し、端々吻合して手術を終えた。病理組織学的には回腸漿膜下から粘膜固有層にかけて拡張した血管を認め、血管壁は不規則に肥厚していた。EVG染色で血管は部分的に弾性線維が消失し、また一部では増加してAVMとして矛盾ない所見であった。一箇所で血管腔内と連続した粘膜のびらんが認められ、出血部位と考えられた。術後経過は良好であった。消化管顕性出血のうちAVMによるものは0.2%と報告されている(北里医 11:201, 1981)。消化管AVMの発生部位をみると78%が右側結腸であり(Medicine 60:36, 1981)、回腸AVMの報告例は少ない。消化管AVMの組織発生について、Boleyら(Gastroenterology 72:650, 1977)やMitsudoら(Human Pathology 10:585, 1979)による後天説と、Durayら(J Clin Gastroenterol 6:311, 1984)による先天説がある。Mooreら(Arch Surg 111:381, 1976)はAVMを3型に分類し、自験例は術中所見から先天性に多いtype 2となるが、発症年齢と併存疾患から後天性と考えている。
索引用語 回腸AVM, C型肝硬変