セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研68:

腹腔内膿瘍を合併した外傷性胆管損傷の1例

演者 植木 貴之(福岡大学筑紫病院消化器科)
共同演者 植木 敏晴(福岡大学筑紫病院消化器科), 大塚 雄一郎(福岡大学筑紫病院消化器科), 馬場 崇徳(福岡大学筑紫病院消化器科), 川本 研一郎(福岡大学筑紫病院消化器科), 野間 栄次郎(福岡大学筑紫病院消化器科), 光安 智子(福岡大学筑紫病院消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器科)
抄録 症例は30歳代男性.2010年5月初旬に婚約者にボクシンググローブで腹部を殴打されたエピソードあり.5月20日頃より心窩部痛,腹部膨満感が出現,その後37℃台の下痢・発熱が出現したため近医を受診.感染性腸炎の診断でレボフロキサシン(LVFX),整腸剤,H2 blockerを投与されたが改善せず.上部消化管内視鏡検査では,十二指腸第二部に白苔を伴った潰瘍を認めた.その後39℃台の発熱が出現.腹部超音波検査で肝外側区域を圧排する内部にガス伴う嚢胞性腫瘤を指摘され、肝膿瘍疑いで7月3日に当科紹介となった.血液検査所見で,WBC8800/μL,CRP7.8mg/dLと炎症反応の亢進あり.肝胆道系酵素の上昇はみられなかった.腹部造影CTでも同部位に,内部にガス伴う嚢胞性病変を認め、経皮経肝的膿瘍ドレナージ術(PTAD)を施行した.穿刺液は赤褐色で混濁あり,細胞数300000/μL,エンドトキシン257.1pg/mLと著明に上昇していた.細菌培養ではγ-Streptococcusが発育した.入院後よりセフォペラゾン・スルバクタム(SBT/CPZ)の投与を開始し,絶食・輸液管理とした.その後炎症反応は改善傾向となり,抗生剤中止し経口摂取を再開したが再燃はみられなかった.下部消化管内視鏡検査では異常所見はなく、内視鏡的逆行性胆管膵管造影では,十二指腸第二部の潰瘍からの造影で総胆管が描出された.このため胆管損傷による腹腔内膿瘍と診断し,内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)を施行した.施行後、PTADチューブをクランプ後,抜去した. 8月11日に退院したが,症状の再燃は認めていない.外傷性胆管損傷により腹腔内膿瘍を形成し,十二指腸に穿破したと考えられた.外傷性胆管損傷について,多少の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 外傷性胆管損傷, 腹腔内膿瘍