抄録 |
【目的】劇症肝炎という用語が示す通り日本では、急性肝不全のうちで劇症肝炎は肝炎に限定されてきた。 一方海外では劇症型肝不全という診断名のもと、症候に基づいた診断が行われ、予後に影響を与える因子は肝障害の原因であると考えられている。 我々も急性肝不全(劇症型肝不全)の治療は、以前より劇症化の予知、病態メカニズムに基づいた現病治療、人工肝補助療法を三本柱としてきており、治療上の方向性と予後を決める因子として原因を重視してきたが、 近年急性肝不全の原因が多様化しており、それぞれの原因に対応した治療法を確立することが急務とされる。またその上で移植外科医との連携体制の確立も必要である。【対象と方法】今回の検討では臓器移植法改正後に経験した11例の急性肝不全症例を検討の対象とした。 原因はHBVの急性感染5例、HBVキャリア発症1例、成因不明例4例、 AIH1例である。 診断はPT40%以下と脳症II度以上を満たし基本的に先行肝疾患のないものを対象と診断した。 治療は症候に対するものとして血漿交換と血液濾過透析(一部はonline)を全例に行い、肝炎に対する治療としては既報のごとく抗ウイルス療法と免疫抑制療法を行った。成因不明例でも薬剤、自己免疫が否定されたものは同様の治療を行った。【成績】HBVの急性感染は5例中3例が生存、キャリアは1例が生存、成因不明例は4例中3例が生存しAIHの一例は死亡した。HBVの急性感染で死亡した2例はいずれも超急性型で肝機能の廃絶した症例であった。 成因不明例の中で死亡した1例はSinusoidal obstruction syndromeの可能性が臨床経過と剖検の結果より示唆された。移植でHBVの急性感染の1例が生存した(死亡例とカウント)【結論】多様な急性肝不全の原因に対応した治療法の確立と(重症のSOSに有効な治療ほ未だない)外科との連携を考えた治療法の確立が急務である。 |