セッション情報 一般演題

タイトル 126:

内科的治療にて救命し得たA型劇症肝炎の一例

演者 山崎 明(熊本大学 消化器内科学)
共同演者 工藤 洋子(熊本大学 消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大学 消化器内科学), 福林 光太郎(熊本大学 消化器内科学), 星田 陽明(熊本大学 消化器内科学), 紙屋 康之(熊本大学 消化器内科学), 葦原 浩(熊本大学 消化器内科学), 永濱 裕康(熊本大学 消化器内科学), 田中 基彦(熊本大学 消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大学 消化器内科学)
抄録 症例は49歳、男性。2010年4月下旬、38℃台の発熱、全身倦怠感が出現し、翌日近医を受診。解熱剤、抗生剤の投与をうけるも、倦怠感、食欲不振が持続するため、症状発現より5日後に前医を受診した。血液検査にてT-Bil 6.5mg/dl、AST 7039U/l、ALT 10837U/l、PT 13.6%と黄疸および著明な肝酵素上昇、凝固因子低下を認め、急性肝炎を疑われ同日当科へ紹介入院となった。来院時、意識は清明。NH3 248μg/dlと高値であったが、少なくともII度以上の肝性脳症は認めなかった。腹部造影CT検査では、肝に腫大や萎縮所見はなく、門脈に沿って周囲にわずかな低吸収域を認めた。入院後より新鮮凍結血漿(FFP)の補充、肝庇護療法による治療を開始した。翌日、多幸感および羽ばたき振戦(肝性脳症II度)が出現したため、劇症肝不全急性型と診断し、ICU入室の上、鎮静目的に人工呼吸器管理下に、血漿交換と持続的血液濾過透析(CHDF)を開始した。血漿交換は、第4病日まで連日施行。第5病日にはPTが56%まで改善したため、その後はFFP補充のみ行った。第8病日以降は補充を必要とせず、第10病日にはPT値は基準値内へ回復した。また、CHDFは、第5病日以降HDFを併用し、第10病日に脳症の改善を認めたため、第12病日に離脱、同日抜管し、第13病日に一般病棟へ転棟となった。この間にIgM-HA抗体が陽性(9.37S/CO)と判明したため、A型劇症肝炎の診断に至っている。黄疸および肝酵素については、第10病日にはT-Bil 6.3mg/dl、AST 37U/l、ALT 97U/lと低下していたが、その後再上昇し、第18病日のT-Bil 16.9mg/dl、AST 181U/l、ALT 149U/lを最高値として徐々に改善を認め、二峰性の経過をとった。2010年3月以降、本邦でのA型肝炎の報告数が急増しており、劇症化により死亡した例もある。今回我々は、内科的治療にて救命し得たA型劇症肝炎の一例を経験したので、文献的考察も含めて報告する。
索引用語 yamasaki, akira