セッション情報 |
研修医発表(卒後2年迄)
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タイトル |
研05:中毒性巨大結腸症を合併し致死的経過を辿った偽膜性大腸炎の1例
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演者 |
山田 紗奈美(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科) |
共同演者 |
工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 王寺 裕(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 姫野 祐一郎(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 松本 主之(九州大学大学院 病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科) |
抄録 |
症例は95歳男性.2010年7月に肺炎で入院し、CTRX+CLDM点滴を4日間、MEPM+CPFX点滴を3日間投与された.尿中肺炎球菌抗原が陽性と判明したため、SBT/ABPC点滴とLVFX内服に変更され、4日間投与後には全身状態も改善し退院となった.しかし退院2日後に38度の発熱と咳嗽が出現し、当院救急外来を受診した.血液検査にて白血球は18000/µLと増加し、胸部X線及び単純CT検査にて肺炎像を認め再入院となった.誤嚥性肺炎の可能性も考慮し絶食のうえMEPM点滴投与を開始した.第2病日に白血球は12000/µLと低下し呼吸状態も改善したが下痢が出現した.整腸剤で経過を見ていたが第4病日より著明な腹部膨満と腸蠕動音消失を認めた.腹部CTにて小腸から大腸の著明なガス像と腹水の貯留を認め、単純X線検査にて結腸は最大径7cmと拡張していた.便中のClostridium difficile (CD) toxinも検出され、中毒性巨大結腸症を併発した偽膜性大腸炎と診断した.さらに血小板減少、凝固系亢進も認めDICを合併していた.VCM内服、腸蠕動促進薬、FOY、トロンボモジュリンの投与を行ったが効果は不十分であった.そこで第7病日に大腸内視鏡を行い、経肛門的にイレウス管を留置し吸気減圧のうえVCMの注腸投与を開始した.観察したS状結腸には広範囲に厚い偽膜の形成を認めた.一時的に腹部の緊満感は軽減したが十分な排液はなく、呼吸状態が悪化し第8病日に死亡した.CD感染症は種々の病態が解明され、現在はCD関連疾患(CDAD)と総称されている.広範な偽膜性大腸炎により呼吸循環不全を呈した劇症偽膜性大腸炎はCDADの3%に報告され、中毒性巨大結腸症を合併した例では極めて予後不良である.自験例は本症の早期診断と治療の重要性を再認識するうえで教訓的な症例と考え報告する. |
索引用語 |
偽膜性腸炎, 中毒性巨大結腸 |