セッション情報 一般演題

タイトル 68:

極めて稀な胃原発絨毛癌の1切除例

演者 奥山 桂一郎(祐愛会 織田病院 外科)
共同演者 佐藤 建(祐愛会 織田病院 外科), 篠崎 由賀里(祐愛会 織田病院 外科), 坂田 泰志(祐愛会 織田病院 内科), 井手 康史(祐愛会 織田病院 内科), 松永 圭司(祐愛会 織田病院 内科), 森 倫人(森外科医院)
抄録 症例は80歳男性、近医で高血圧と腰痛、高尿酸血症で通院中、平成21年5月頃より食欲不振と体重減少を認めた。近医GISにて、EGJにかかる胃噴門部の隆起性病変を認め、精査加療目的に当院に紹介となった。術前検査にてHb8.7と高度の貧血を認めた。MDLではEGJを取り巻くように径約8cm大の立ち上がり明瞭な丈の高い隆起を認めた。GISでは、胃噴門部に表面に白苔の付着を伴った径8cm大の易出血性の隆起性病変を認め、食道側に約1cm程浸潤を認めた。生検結果はPoorly differentiated adeno caとSCCが混在していた。腹部CTにて小弯側を中心にLNの腫大を認めたが、遠隔転移はなく手術適応と判断した。食道胃接合部癌(GE、1型、T2(SS)N1M0、Stage2B)と診断した。同年6月29日に下部食道、胃全摘術、胆嚢摘出術+D1+βリンパ節郭清を施行した。腫瘍は約90mm大と大きな1型の病変で、主座は胃噴門部であり、一部食道側に浸潤を認めた。術後経過は比較的良好であり、術後19日目に退院となった。病理組織所見ではChoriocarcinoma with a component of tubular adenocarcinoma HCG陽性、1型、T2(SS)N1(LN#2(3/4)、#3(1/2))M0、でStage2Bであったがly3 v3と高度の脈管浸襲を認めた。切除断端はどちらも陰性であり、根治切除と判断した。退院後はS-1投与を施行しえた時期もあったが、大動脈周囲LN再発のため、しだいに全身状態が悪化、術後9カ月で死亡した。絨毛癌は妊娠性と非妊娠性に大別され、非妊娠性における胃原発の絨毛癌は、検索しえた限りでは本邦において89例の報告にとどまり、胃悪性腫瘍の中では0.08%と極めて稀である。発生部位としては胃体部~前庭部がほとんどで、本症例のような噴門部は少ない。組織学的には約70%に腺癌との合併が報告されている。治療としては基本的には手術が理想的であるが、発見時に高度に進行している症例が多く、切除不能なcaseも多いようである。放射線治療や抗癌剤に対する効果も低いと考えられており、予後は極めて不良である。
索引用語 絨毛癌, HCG