セッション情報 一般演題

タイトル 121:

肝膿瘍の再発を繰り返した慢性肉芽腫症の一例

演者 横山 昌典(村上華林堂病院内科)
共同演者 小山 洋一(村上華林堂病院内科), 司城 博志(村上華林堂病院内科), 向坂 彰太郎(福岡大学消化器内科)
抄録 【はじめに】慢性肉芽腫症(Chronic Granulomatous Disease;CGD)は,食細胞の活性酸素産生能の欠如が原因で,乳児期から重篤な細菌感染症を繰り返す遺伝性食細胞機能異常症である.感染予防目的で1970年代からST合剤,1990年代からIFN-γの投与が試みられ,一定の効果が得られている.しかし,現在でも予後は不良で,敗血症や骨髄炎などの合併により小児期で死亡する事が多く,内科領域で遭遇することは殆ど見られない.今回,我々は,青年期に初回の肝膿瘍を発症し,以後再発・難治性であったが,CGDと診断後,良好な治療経過が得られている一例を経験したので報告する.
【症例】症例は16歳,男性.1995年11月より全身倦怠感,体重減少が見られ,1996年1月から発熱が持続するために当院受診.炎症所見と画像診断で肝膿瘍と診断した.抗菌薬で改善なく,経皮的肝膿瘍ドレナージ術を施行.膿汁より黄色ブドウ球菌が培養された.一時改善するも同年4月,2000年2月,2002年3月,2003年1月,2005年2月と再発を繰り返し,その間も頻回の発熱による治療を余儀なくされた.また,2003年には敗血症性ショックから多臓器不全を合併した.いずれも黄色ブドウ球菌が起炎菌であった.他に明らかな基礎疾患や免疫異常も見られないため,白血球機能検査を行った.好中球貪食能は正常であったが,殺菌能が低下しており,CGDを疑った.精査の結果,活性酸素産生能は欠損,gp91phox蛋白質発現解析では発現低下認めず,CGDの細胞質蛋白質欠損型(p47phox,p67phox)と確定診断された.当時,この病型の1/3にIFN-γの感染予防が有効とされていたため,投与を開始した.その後,現在まで再発なく良好な経過が得られている.
【結語】肝膿瘍の再発を繰り返した慢性肉芽腫症の一例を経験した.確定診断後,IFN-γ治療により長期の感染予防が可能となった.若年発症の難治性肝膿瘍の場合,本症を念頭に入れた診療が必要と思われた.
索引用語 肝膿瘍, 慢性肉芽腫症