セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専30:

劇症型肝不全にて生体肝移植を施行したveno‐occlusive disease(VOD)の1例

演者 赤司 太郎(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 松崎 寿久(長崎大学病院消化器内科), 宮明 寿光(長崎大学病院消化器内科), 田浦 直太(長崎大学病院消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 大河原 均(大分県厚生連鶴見病院消化器科), 曽山 明彦(長崎大学大学院移植・消化器外科), 日高 匡章(長崎大学大学院移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学大学院移植・消化器外科), 江口 晋(長崎大学大学院移植・消化器外科), 奥平 定之(長崎大学大学院移植・消化器外科), 林 徳真吉(長崎大学病院病理部), 中島 収(久留米大学医学部病理学講座), 鹿毛 政義(久留米大学医学部病理学講座), 兼松 隆之(長崎大学大学院移植・消化器外科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 30歳女性。2008年8月に不正性器出血を認め、低用量ピルの内服歴(約1ヶ月間)がある。2009年5月全身倦怠感と腹部膨満感を主訴に精査を行い、腹部超音波検査で腹水の貯留、また腹部造影CTおよび肝静脈造影では肝腫大、肝部下大静脈の狭小化を認めた。8月近医で精査を行ったが、原因疾患は特定されず、肝部下大静脈の狭小化に対してワーファリンによる抗凝固療法を開始した。その後、前縦隔腫瘍を認め、ホジキンリンパ腫stageIIAと診断された。ABVD療法を開始したが、肝機能障害を認めたために途中で中止し、根治的治療としてマントル野照射を施行した。骨髄移植は行われていない。ホジキンリンパ腫は根治性が高いが、腹水コントロールが困難となり、食道胃静脈瘤の出現も認め肝不全の進行を認めた。長期生存には肝移植が必要と判断され、生体肝移植を患者、家族が希望したので、4月29日生体肝移植前の精査目的で当科入院となった。入院時脳症III度であり、またPT 17%、NH3 400N-μg/dl以上、総Bil 3.2mg/dl(直接Bil 2.1mg/dl、間接Bil 2.1mg/dl)、AST 54IU/l、ALT 29IU/l、LDH 295IU/l、BUN 102mg/dl、Cr 4.81mg/dlであった。MELD39点、Child C 15点であり、CHDF、血漿交換を含めた集中管理のため、同日ICU入室となった。全身状態が改善してきたので、5月3日に当院移植・消化器外科へ転科し、右葉グラフトを用いた生体肝移植術施行した。移植後の経過は順調であり、7月7日当院を退院となった。切除肝の検討では肉眼的には肝部下大静脈は腫大した尾状葉により圧排されており、狭窄、閉塞は認めなかった。肝静脈は末梢側での狭窄であり、中枢側の狭窄は認めなかった。組織学的には肝静脈の内膜の肥厚と、肝内の静脈枝の閉塞像が顕著に観察され、veno-occlusive disease(VOD)の診断であった。また腹部造影CTで肝両葉に認められた結節は切除肝の検討ではいずれも過形成結節であった。本症例は術前に肝不全の原因は不明であったが、切除肝の検討ではVODが肝不全の原因であった。非骨髄移植例のVODについて若干の検討を行い報告する。
索引用語 veno-occlusive disease, 劇症型肝不全