抄録 |
【症例】 65歳男性。水俣病。H20年7月腹部腫瘤を自覚し近医受診精査、胆嚢の腫大緊満の指摘のみ。H21年1月右季肋部違和感にて再受診、頸胸腹部CT,GIF,TCF,PETにて胆嚢腫大、肝内多発性腫瘤を認め腫瘍生検で診断つかず精査加療目的で紹介入院。【現症】身長156cm、体重56kg、頭頸部、胸部;異常所見なし、腹部右肋骨弓下に手拳大の弾性硬の腫瘤を触知する。Courvoisier sign陽性【検査所見】WBC;7460,Hb13.5,Plt22.0万,AST;54,ALT;46 LDH 932,NSE;210, sIL2R;1077,CEA;1.2,5-HIAA;11.8. 肝腫瘍生検;poor;y differentiated carcinoma,CAM5.2,AE1/AE3,CD56,chromogranin-A +synaptophsin, vimentin-,MIB1 59%, CT;肝内に多発する辺縁不明瞭、内部不均一な腫瘍。胆嚢緊満、胆嚢内に腫瘍無、ERCP;胆嚢管は描出されずPTDBD造影;胆嚢壁は不整無し、胆嚢管は描出なし【臨床経過】経過、画像及び腫瘍生検より胆嚢管原発が極めて疑わしい神経内分泌腫瘍と診断した。Mib-1高値で高悪性度と考え肝及び胆嚢管に限局していたため肝動注を選択、newFP療法を行った。副作用は認めず、NSEは10と低下、2クール目に肝内の腫瘍縮小、3クール目に胆嚢動脈に薬剤流入後胆嚢の腫大、緊満も消失した。【考察】神経内分泌腫瘍の内、MIB-1高値の低分化腫瘍は悪性度が極めて高く予後不良と言われている。胆道系での頻度は低く胆嚢管原発の高悪性度神経内分泌腫瘍は検索し得た範囲で過去3例を認めるのみである。手術不能例に対しては全身化学療法、肝限局例に対してはTAE等が行われているが本症例では肝内に限局かつ肝内に多発している事より肝動注療法(newFP)を選択し現時点迄は良好な治療効果を示している。神経内分泌腫瘍の診断、治療に関し貴重な症例と考えられた。 |