セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専47:

広範囲に及んだ壊死性腸炎の1例

演者 工藤 健介(公立学校共済組合 九州中央病院)
共同演者 長谷川 博文(公立学校共済組合 九州中央病院), 二宮 瑞樹(公立学校共済組合 九州中央病院), 濱津 隆之(公立学校共済組合 九州中央病院), 本坊 拓也(公立学校共済組合 九州中央病院), 椛島 章(公立学校共済組合 九州中央病院), 牛島 千衣(公立学校共済組合 九州中央病院), 北村 昌之(公立学校共済組合 九州中央病院)
抄録 壊死性腸炎は致死率が高く予後不良な疾患であり、救命には手術による壊死腸管の確実な切除が必要である一方、早期診断が難しく、術前診断がつくものは少ない。今回、診断に苦慮したが、早期手術により救命し得た壊死性腸炎の1例を経験した。症例は84歳、女性。既往歴として直腸癌にて60歳時に前方切除術後、脳梗塞、高血圧症、Parkinson病、認知症がある。9日間排便がみられなかった後、気分不良、嘔気が出現したため入所中の施設より当院へ救急搬送となった。来院時、意識はJCS 30、体温35.3℃と低体温で、四肢は湿潤し冷たく、腹部全体に膨隆あり、疼痛の訴えは不明瞭だったものの、臍下部左側を中心とした圧痛を認めた。血液検査上は白血球数15400/μl(好中球79.3%)、CRP 0.10mg/dl、また血液ガス分析にてpH7.329、BE-6.1とアシドーシスを呈していた。腹部CT上は著明な大腸の拡張及び便塊の貯留を認めたが、明らかな腸管壊死の所見は指摘できなかった。しかし腹部所見より急性腹症、汎発性腹膜炎の可能性は否定できなかった。さらに呼吸促迫、意識レベルの低下を認め、来院2時間半後に再度行った血液ガス分析ではpH7.258、BE-10.3と短期間で急速にアシドーシスが進行し全身状態の悪化も伴っており、急性腹症の診断で来院3時間後に緊急手術を開始した。手術所見は、上行結腸肝彎曲部から直腸下部にかけて、連続性に腸管壊死を疑う色調変化を来たしていた。支配血管の拍動はいずれも良好だった。粘膜面を確認して壊死腸管の切除範囲を決定し、上行結腸から直腸Rbにかけて切除し、口側断端結腸を人工肛門とするハルトマン手術を施行した。残存腸管に関しては、人工肛門の色調良好で、術後9日目に施行したCTでも明らかな腸管壊死の所見は認めなかった。本症例は病変部が広範囲に及んだ比較的稀な壊死性腸炎の1例であり、若干の考察を加え報告する。
索引用語 腸管壊死, 緊急手術