セッション情報 一般演題

タイトル 159:

アニサキス感染に伴う急性十二指腸粘膜病変を契機に急性膵炎を発症した膵管癒合不全の一例

演者 松尾 享(福岡県済生会福岡総合病院)
共同演者 藤山 隆(福岡県済生会福岡総合病院), 明石 哲郎(福岡県済生会福岡総合病院), 山田 真梨子(福岡県済生会福岡総合病院), 高橋 俊介(福岡県済生会福岡総合病院), 淀江 賢太郎(福岡県済生会福岡総合病院), 吉村 大輔(福岡県済生会福岡総合病院), 落合 利彰(福岡県済生会福岡総合病院), 土田 治(福岡県済生会福岡総合病院), 壁村 哲平(福岡県済生会福岡総合病院)
抄録 患者は81歳男性。大量飲酒歴、胆石症の既往なし。起床時より心窩部痛、背部痛、下痢、嘔気が出現し、翌日も疼痛が持続するため当院紹介受診。血液検査で炎症反応上昇(白血球11700/μL, CRP 2.8mg/dL)および膵酵素上昇(アミラーゼ 837 IU/ml, リパーゼ 852 IU/ml)を認めた。黄疸、肝機能異常は認めなかった。CTにて膵頭部周囲の脂肪織濃度の軽度上昇を認め、急性膵炎の診断で入院となった。絶食・補液・蛋白分解酵素阻害剤の保存的治療を行い、白血球数・膵酵素は低下したが腹痛が改善しないため、入院3日目に上部消化管内視鏡検査を施行した。胃内には発赤粘膜が散在し、体中部大弯に刺入したアニサキス虫体を認めた。十二指腸下行脚には凝血塊の付着する不整形の潰瘍性病変が多発し、急性十二指腸粘膜病変(ADML)の所見であった。生検鉗子にてアニサキスを摘出後、腹痛は速やかに軽減した。問診では腹痛出現の前日にサバの刺身を摂取していた。膵炎の原因検索のため入院7日目に側視鏡にて十二指腸を観察、地図状の潰瘍性病変はVater乳頭まで波及していたが、乳頭開口部は正常であった。副乳頭が通常存在する部位には潰瘍性病変が波及し副乳頭は不明瞭であった。MRCPでは主膵管は胆管末端と離れた口側の十二指腸に終わり、腹側膵管は確認できなかったため、膵管癒合不全と診断した。患者は症状消失し入院16日目に退院となった。今回の膵炎は膵管癒合不全患者の副乳頭にADMLが波及し、膵液の流出障害を来たして発症した可能性が高いと考えられた。膵管癒合不全は本邦では人口の1%前後に認められ、アルコール多飲や脂肪過摂取を引き金に膵炎が発症することが多いが、アニサキス感染に伴うADMLを契機に膵炎を発症した症例は過去に報告がない。貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告する。
索引用語 アニサキス, 急性膵炎