セッション情報 一般演題

タイトル 107:

腹壁膿瘍を契機に発見され、術後に播種性骨髄癌症をきたした横行結腸癌の1例

演者 飯坂 正義(天草中央総合病院外科)
共同演者 村上 聖一(天草中央総合病院外科), 竹口 東一郎(天草中央総合病院外科)
抄録 大腸癌が腹壁膿瘍を契機に発見されることは、比較的稀である。また大腸癌の経過において、骨髄転移は稀であるとされる。我々は、腹壁膿瘍を契機に発見され、手術後に播種性骨髄癌症(以下DCBM)をきたした横行結腸癌の1例を経験したので報告する。症例は、71歳の男性で、臍下の有通性腫瘤を主訴に外来を受診した。当該腫瘤に対し、切開排膿処置を施したが難治性であった。また腹部CT検査において、腫瘤の基部が腹腔内にあると考えられたことなどから、外科的切除術を試みたところ、術中所見として横行結腸腫瘍と連続を認め、横行結腸癌の腹壁浸潤と診断された。また腹水細胞診ならびに大動脈周囲リンパ節に低分化型腺癌を認め、姑息的に横行結腸切除術を施行した。切除標本に関して、肉眼的には、4型の全周性腫瘤をなし、腹壁腫瘤への連続性が伺われた。一方、最終病理組織診断は、大腸癌では稀とされる印環細胞癌であった。術後化学療法の導入を検討していたところ、術後40日頃より、貧血の進行悪化、血小板数の著しい減少、フィブリノーゲンの減少、DDダイマーの上昇などを認め、播種性血管内凝固症候群(以下DIC)を併発した。また血清尿酸値が14mg/dlと異常高値を示し、腫瘍崩壊症候群(以下TLS)をきたしていると考えられた。骨髄転移を検索する目的で骨髄検査を行った結果、骨髄中に大腸癌細胞を認め、骨髄転移が明らかとなった。一般にDCBMにおいては、血清ALP値やLDH値の急激な上昇が認められるとされるが、本症例においては軽微な増加にとどまった。一方、血清尿酸値は著増を呈し、DCBMを疑う契機となった。すなわち、がん診療経過中に血清尿酸値の急激な上昇をみた場合、とくに主要臓器への転移が認められない場合は、骨髄転移の有無を検索する必要があると考えられた。また一般にDCBMはDICに伴う出血症状などにより、急激な転帰を迎えることが少なくないとされるが、適切な時期に化学療法がなされた場合、予後が改善されたと思われる症例報告もあり、すみやかにDCBMの診断がなされることは、がん治療において肝要であると考えられた。
索引用語 播種性骨髄癌症, 血清尿酸値