セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専16:

上部消化管出血の原因となった十二指腸脂肪腫の1例

演者 末次 理成(朝倉医師会病院消化器内科)
共同演者 田口 順(朝倉医師会病院消化器内科), 實藤 俊昭(実藤医院), 城野 智毅(朝倉医師会病院消化器内科), 馬場 真二(朝倉医師会病院消化器内科), 梶原 雅彦(朝倉医師会病院消化器内科), 石井 邦英(朝倉医師会病院消化器内科), 安倍 弘彦(朝倉医師会病院消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 症例は77歳、男性。平成22年4月より肺血栓塞栓症、虚血性心疾患のため、当院循環器内科でアスピリンおよびワルファリンカリウムの服用中であった。8月初旬より黒色便、全身倦怠感を自覚したため、8月24日に当院循環器内科を受診したところ、血液検査で血清Hb値9.1 mg/dlと貧血を認め、精査目的にて当科紹介となった。上部消化管内視鏡検査を行い、十二指腸下行脚に径14 mm、丈の高さが30 mmの棍棒状をした粘膜下腫瘍病変を確認した。病変頂部にはびらんを生じ、脂肪腫様の腫瘤性病変が露出していた。びらん辺縁部に露出血管があり、出血を生じていたため、クリップにて止血術を施行した。その後入院加療を行い、貧血の進行は認めていない。また、26日に施行したEUSで病変は粘膜下層を主座とし、境界明瞭で、内部均一な高エコー像を呈していた。上部消化管内視鏡検査およびEUS所見より、病変は十二指腸脂肪腫と診断した。確定診断、治療目的にて、31日にEMRを施行した。切除された病変は、大きさ30×14 mmで、黄白色調、病変頂部には腫瘍の露出を認めた。組織学的には粘膜下に成熟した脂肪組織が分葉状に増殖し、間質には小血管の介在を認めた。また、病変頂部は粘膜の剥奪を認め、びらんとなり、小血管の増生、リンパ球、好酸球浸潤がみられた。以上より、脂肪腫と確定診断した。切除後の経過は良好で、以後出血を示唆する所見はみられない。上部消化管出血を認めた場合、稀ではあるが、本症例のように十二指腸脂肪腫が原因となる症例も存在する。また、一般的に脂肪腫には血管に乏しいが、特に原因不明の上部消化管出血を認めた場合、脂肪腫からの出血も念頭に置き、精査を行う必要がある。
索引用語 十二指腸, 脂肪腫