セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
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タイトル | 研95:持続的低血糖をきたした原発性肝細胞癌の一例 |
演者 | 深江 政秀(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科) |
共同演者 | 橋元 悟(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 阿比留 正剛(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 戸次 鎮宗(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 佐々木 龍(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), はい 成寛(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 本吉 康英(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 小澤 栄介(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 長岡 進矢(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 小森 敦正(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 八橋 弘(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 伊東 正博(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 藤岡 ひかる(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科), 石橋 大海(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター 消化器科) |
抄録 | 今回、我々は、B型慢性肝炎を背景にした原発性肝細胞癌の経過観察中に、腫瘍随伴症候群の一つである持続的低血糖をきたした症例を経験したので報告する。 症例は、51歳、男性。主訴は意識障害で、既往歴・生活歴に特記すべきことはない。200X年1月、B型慢性肝炎、肝細胞癌HCC stageIVb(肋骨転移)と診断した。診断時の肝予備能は、T.Bil 0.6mg/dl, Alb 4.2g/dl, PT 84.8%, 腹水なし, 脳症なしであり、保たれていた。HCCは、多血性で肝左葉を主座に、左葉を置換するように認め、門脈左枝に腫瘍栓を形成していた。腫瘍は最大径約20cmと巨大なものであり、右葉にも小さなHCCを多数認めたが、予後改善を目指した肝左葉切除術を施行した。その後、残肝に対して肝動脈注入療法TAIを、肋骨転移に対して放射線療法(合計20Gy)を施行した。TAIによっても画像上の腫瘍縮小効果、腫瘍マーカーの低下はみられなかった。200X年5月にJCS-III-200の意識障害をきたして当院救急搬送となった。来院時の血液検査では、血糖 6mg/dl, NH3 205μg/dlと著明な低血糖および高アンモニア血症を認めた。ブドウ糖液静注により意識レベルは改善傾向ではあったが、羽ばたき振戦を伴っていたため肝性脳症による意識障害も合併しているものと判断した。その後、血糖維持のためにブドウ糖持続点滴(ブドウ糖約200g/日)および分子鎖アミノ酸製剤投与により意識レベルは改善した。しかし、CTでは肝実質全域にびまん性に発育したHCCおよび新たに多発肺転移巣を認め、腫瘍制御は不可能と考えられ、緩和治療の方針とした。ブドウ糖液持続点滴静注・疼痛コントロールを行い、診断から約4ヵ月後の6月上旬に癌死された。 本症例のように持続的低血糖をきたした原発性肝細胞癌症例は、比較的稀とされており、その機序は 1、腫瘍の急速な増大により糖供給不足となるため 2、腫瘍がIGF-IIを産生するため のいずれかとされている。本症例における機序および若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | 肝細胞癌, 低血糖 |