セッション情報 | 一般演題 |
---|---|
タイトル | 157:妊娠が契機となった脂質代謝異常症を背景とする重症急性膵炎を発症し母子ともに救命しえた一例 |
演者 | 井戸 佑美(熊本大学消化器内科) |
共同演者 | 具嶋 亮介(熊本大学消化器内科), 尾崎 徹(熊本大学消化器内科), 牧 曜子(熊本大学消化器内科), 野中 康一(熊本大学消化器内科), 加来 英典(熊本大学消化器内科), 村尾 哲哉(熊本大学消化器内科), 直江 秀昭(熊本大学消化器内科), 横峰 和典(熊本大学消化器内科), 桜井 宏一(熊本大学消化器内科), 佐々木 裕(熊本大学消化器内科) |
抄録 | 29歳、未経妊未経産の女性。妊娠26週4日夕食後に上腹部痛と嘔吐が出現し、近医産婦人科に入院となった。入院加療後も上腹部痛は増強し、血液検査でTG 14328mg/dl、T-Cho 1377mg/dl、Amy 145U/lと高値であったため急性膵炎の併発を疑われ、妊娠26週6日未明に当院救急搬送となった。来院時、母体は発熱・頻脈を呈しており心窩部から右季肋部に自発痛・圧痛を認め、胎児はNST上reactive patternであった。妊娠中期であったが、確定診断と治療方針決定のため、本人家族に十分なICの上、腹部造影CTを施行した。膵は全体に腫大していたが造影不領域はなく、腎下極以遠のfluid collectionを認めた。予後因子は4点でCT grade2の重症急性膵炎と診断した。大量輸液と蛋白分解酵素阻害薬の投与を開始したが、尿量の低下と呼吸状態悪化を認め、予後因子も6点と悪化したため第2病日ICU入室となった。CHDFとCPAPを開始し、高脂血症の治療としてインスリン・ヘパリン併用療法とLDLアフェレーシスを行った。呼吸状態は徐々に改善し、血清TG値も500mg/dl程度まで低下した。第8病日ICU退室となった。モニター上、胎児の経過は順調であったが、膵仮性嚢胞感染の合併の可能性が高く、母体への治療の選択肢の幅を広げる為に第24病日(妊娠30週1日)帝王切開術を施行した。第35病日経口摂取を開始し、脂質制限食で高脂血症も増悪は認めず、第47病日退院となった。現在母子共に良好な経過をたどっている。妊娠時の急性腹症の一つに脂質代謝異常で発症する急性膵炎が報告されているが、その頻度は極めて稀であり、重症化した場合は母児ともに致死率が高いことから迅速な診断と治療を要する。今回、妊娠を契機とする脂質代謝異常症を背景とした重症急性膵炎を発症し、保存的集中治療にて母子ともに救命し得た一例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 | 急性膵炎, 妊娠 |