セッション情報 一般演題

タイトル 8:

HNPCC(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)に発生した十二指腸ポリープに対してEMRを行った一例

演者 今村 祥子(特別医療法人 春回会 井上病院)
共同演者 三嶋 亮介(特別医療法人 春回会 井上病院), 松田 剛(特別医療法人 春回会 井上病院), 陳 俊全(特別医療法人 春回会 井上病院), 柳 謙二(特別医療法人 春回会 井上病院), 井上 健一郎(特別医療法人 春回会 井上病院), 牧山 和也(特別医療法人 春回会 井上病院)
抄録 症例は75歳女性。昭和55年(45歳時)にS状結腸癌に対してS状結腸切除術を受けている。以後、平成10年に胃癌にて胃全摘術、平成15年に横行結腸癌、平成17年頃に髄膜腫の診断にてそれぞれ外科的治療歴及び複数回の大腸ポリープの内視鏡的切除歴があった。家族歴は父親が37歳時に大腸疾患で死亡、父方の伯父が40歳台で大腸疾患の診断を受けている。平成19年から当院に通院中であったが、今回、定期経過観察目的での小腸造影と上部消化管内視鏡検査を行ったところ、上部小腸に有茎性及び亜茎性の白色調のポリープを計3個認めた。生検の病理結果からは、tubular adenomaであり、精査加療目的で当科入院となった。シングルバルーン小腸内視鏡を施行したところ、全小腸には先に指摘された病変以外に腫瘍性病変は認められなかった。十二指腸の3病変に対して拡大内視鏡での観察後、内視鏡的粘膜切除術を施行した。病理診断では、Tubulovillous adenoma with high grade atypiaの診断であり、治癒切除であったがこれまでの病歴からHNPCCが疑われたため、本人、家族の同意を得て遺伝子検査を行った。検査の結果、アジア人のHNPCCに最も多いとされるhMLH-1遺伝子の変異が認められた。HNPCCは家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis:FAP)と異なり、ポリポーシスなどの形質発現を認めないため、臨床上は病歴から推察することが多く、実際に遺伝子診断を行った症例は少ないと考えられる。また、本症例にポリープが併存することが多いことが近年知られてきており、若干の文献的考察を加え、報告する。
索引用語 HNPCC, 十二指腸ポリープ