セッション情報 一般演題

タイトル 22:

GISTとの鑑別が困難であった難治性胃潰瘍の2例

演者 久保倉 尚哉(九州大学病態機能内科学)
共同演者 藤岡 審(九州大学病態機能内科学), 前畠 裕司(九州大学病態機能内科学), 中村 昌太郎(九州大学病態機能内科学), 上田 純二(九州大学臨床腫瘍外科学), 永井 英司(九州大学臨床腫瘍外科学), 藤田 恒平(九州大学形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学形態機能病理学), 藤澤 聖(九州厚生年金病院消化器内科), 大串 秀明(大串胃腸科内科クリニック), 甲斐 信博(かい外科胃腸科クリニック), 松本 主之(九州大学病態機能内科学)
抄録 症例1は60歳、男性。平成19年5月より心窩部痛、体重減少を認め、6月中旬に九州厚生年金病院で上部消化管内視鏡検査を施行され、胃体上部前壁に潰瘍性病変を指摘された。H. pylori除菌治療およびPPI内服を行ったが潰瘍は瘢痕化せず、生検で悪性リンパ腫が疑われたため、当科へ紹介入院となった。入院時の尿素呼気試験は陰性であった。胃X線・内視鏡検査では、体上部前壁に粘膜下腫瘍様の立ち上がりを呈し、辺縁整の潰瘍を伴う6cm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。EUSでは全層性の低エコー性腫瘤として描出された。潰瘍辺縁および潰瘍底からの生検で腫瘍細胞は検出されず、診断目的で隆起の一部をEMRで切除して検索したが、悪性リンパ腫の所見は認めなかった。画像所見からGISTを疑い、噴門切除術を施行した。切除標本の病理組織学的検査にて、潰瘍はUl-2~3であり、正常粘膜に覆われた隆起の部分では高度の線維化のため粘膜下層が著明に肥厚していた。症例2は39歳、女性。平成20年3月に心窩部痛のため、大串胃腸科内科クリニックで上部消化管内視鏡検査を施行され、胃前庭部後壁に潰瘍を指摘された。H. pylori生検培養は陰性であった。PPIの内服で症状は一時的に改善したが、同年11月に症状再発したため、かい外科胃腸科クリニックを受診され、同部位に潰瘍を指摘された。内視鏡検査で経過観察されていたが、潰瘍は難治性で瘢痕化せず、潰瘍周囲に粘膜下腫瘍様隆起が目立つようになり、腫瘍性病変が疑われたため、平成22年4月に当科に紹介された。胃X線・内視鏡検査では、頂部に深い潰瘍を伴う4cm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め、EUSでは第4層以深の低エコー性腫瘍と考えられた。生検で腫瘍組織は検出されず、診断目的に開窓下生検を試みたが、採取組織が小さく、確定診断には至らなかった。管外発育型のGISTを疑い、幽門側胃切除術を施行した。切除標本の病理組織学的検査では、高度の線維化による粘膜下層の著明な肥厚を伴うUl-2~3の潰瘍であった。いずれも粘膜下腫瘍様の形態を呈した稀な難治性胃潰瘍の症例と考えられ、文献的考察を加え報告する。
索引用語 胃潰瘍, 粘膜下腫瘍