セッション情報 | 専修医発表(卒後3-5年) |
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タイトル | 専31:ステロイド内服にて遷延した黄疸に対してステロイドパルスが奏効した薬物性肝障害の1例 |
演者 | 千堂 一樹(鹿児島大学消化器内科) |
共同演者 | 橋口 正史(鹿児島大学消化器内科), 有馬 卓志(池田病院), 小田 耕平(鹿児島大学消化器内科), 最勝寺 晶子(鹿児島大学消化器内科), 馬渡 誠一(鹿児島大学消化器内科), 呉 建(鹿児島大学消化器内科), 熊谷 公太郎(鹿児島大学消化器内科), 玉井 努(鹿児島大学消化器内科), 森内 昭博(鹿児島大学消化器内科), 宇都 浩文(鹿児島大学消化器内科), 桶谷 真(鹿児島大学消化器内科), 井戸 章雄(鹿児島大学消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器内科) |
抄録 | 〈症例〉73歳 女性.〈現病歴〉肝機能異常を指摘されたことはなかった.2010年3月排尿困難のため近医を受診,猪苓湯を処方され内服した.4月初旬に倦怠感が出現し,市販の清心蓮子飲を内服した.4月12日から身絞り感が出現し,LVFXと加味逍遥散を処方され内服した.その後黄疸が出現,4月18日近医でAST 2160 IU/l, ALT 1497 IU/l,T-Bil 15 mg/dlと肝機能障害,黄疸を認め入院となった.4月25日からステロイド30mg(5日間で漸減終了),UDCAの内服を開始された.4月30日T-Bil 27 mg/dlとさらに上昇したため,5月1日ステロイド20mgを再開された.データは改善したが,T-Bil 15 mg/dl前後で遷延したため,6月24日当科紹介入院となった.〈検査所見〉T-Bil 15.7 mg/dl,AST 87 IU/l,ALT 115 IU/l, ALP 552 IU/l,Alb 2.5 g/dl,CRP 1.3 mg/dl,ANA 80倍,AMA 20倍未満,HCV抗体陰性,HBs抗原/HBc抗体陰性.〈入院後経過〉ステロイドの効果は十分ではなかったため漸減中止,UDCAは継続した.腹水貯留があり,腹水コントロールを行った後,7月13日肝生検を施行した.肝組織所見および薬物性肝障害スコアリングから胆汁うっ滞型薬物性肝障害と判断した.DLSTではLVFXと加味逍遥散が陽性であった.7月28日からステロイドパルス,後療法としてステロイド40mgを投与した.肝胆道系酵素値は低下傾向でありステロイドは漸減した.8月30日AST 33 IU/l, ALT 39 IU/l,T-Bil 2.3 mg/dlとなりステロイドは低用量で継続する方針として退院した.〈考察〉近年,漢方薬,民間薬,健康食品による肝障害の報告が増加している.漢方薬は,DLSTで偽陽性が多いことが問題点であるが,本例では漢方薬では加味逍遥散のみが陽性の結果であり有用であったと考える.薬物性肝障害の基本治療は,起因薬物を同定し,その薬物を中止することである.本例では,前医から投与されていたステロイドの効果が不十分であったため一旦中止したが,黄疸が遷延し,肝予備能の低下をきたし,肝組織では炎症や線維化が強いことから,ステロイドパルス療法を行い黄疸の改善が得られた. |
索引用語 | 薬物性肝障害, ステロイドパルス |