セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研96:

HBV及びアルコ-ル性肝硬変に認めた胆汁産生性肝細胞癌の一例

演者 山田 優里(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野)
共同演者 岩切 久芳(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 夏田 朱一郎(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 日高 舞(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 土持 舞衣(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 橋本 神奈(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 山路 卓巳(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 中村 憲一(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 安倍 弘生(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 三池 忠(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 楠元 寿典(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 田原 良博(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 山本 章二朗(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 蓮池 悟(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 永田 賢治(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 矢野 公一(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 近藤 千博(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 千々岩 一男(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 下田 和哉(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野)
抄録 症例は50歳の男性。元々、日本酒一日1升を飲酒する大酒家であった。2003年12月に大量腹水にて前医救急外来を受診した際にアルコール及びHBVによる非代償性肝硬変(Child-Pugh grade C)と診断された。その後、禁酒及び活動性のB型慢性肝炎に対し、2004年1月よりLamivudineの投与が開始された。
2005年4月にS8ドーム直下に肝細胞癌(以下HCC)を初発。この際にはChild-Pugh grade Bと肝予備能改善しており、翌5月にTACEによる加療が行われた。この際にbreakthrough hepatitisを認め、Adefovirを開始された。同年8月にS8 HCCの局所再発を認め、再度のTACE後に腹腔鏡下RFAを追加され加療された。
その後は異所再発を繰り返し、2007年4月には前医にてS6 HCCに対しPEIT+RFA、2009年2月には当科にてS2/3 HCCに対しRFAによる加療が行われた。尚、2007年4月入院時には肝予備能はChild-Pugh grade Aと改善を認めた。
2010年4月、Gd-EOB-DTPA(以下EOB)造影MRI上、S8に径23mmの動脈優位相及び門脈優位相では低信号域、肝細胞相にて周辺肝とほぼ等信号を呈する腫瘤影を認めた。その内部には径11mmの動脈優位相にて染影され、門脈優位相、肝細胞相にて低信号域となるHCCを疑う所見を認めた。入院後に施行した腹部血管造影下CT上、同部はCTAPで径24mmの欠損像となり、その内部にCTHA上で径15mmの染影部を認めた。これらの所見よりEOB取り込み能を有する高分化型HCCの一部にmalignant fociを生じているものと考えた。肝予備能はChild-Pugh grade Aと良好であったため、これに対し当院第一外科にて肝部分切除術を施行した。切除された腫瘤の病理組織学的所見は胆汁産生能を有する高分化型HCCの一部に中分化型HCCを認め、術前画像診断を裏付けるものであった。
Saitoらの報告によれば、EOB造影MRI肝細胞相上、9%のHCCが高信号、多田らの報告によれば、6.9%のHCCが高信号もしくは等信号を呈するとされている。本症例は、血管造影下CTにて腫瘍範囲の同定が可能であったが、EOB造影MRIにてHCCを診断する際には、これらEOB取り込み能を有するものの存在に注意が必要と考えられた。
索引用語 肝細胞癌, EOB造影MRI