セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研79:

1型糖尿病に伴う腎症に合併したC型肝炎にβ-インターフェロン(IFN)が著効した1例

演者 日野 直之(佐世保中央病院消化器内視鏡科)
共同演者 木下 昇(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 林 和歌(佐世保中央病院人工透析センター), 森内 昭江(佐世保中央病院糖尿病センター), 原口 雅史(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 妹尾 健正(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 加茂 泰広(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 楠本 浩一郎(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 草場 麻里子(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 松村 雅人(佐世保中央病院消化器内視鏡科)
抄録 現在の慢性C型肝炎の治療の中心はPEG-IFN/リバビリン併用療法であるが,溶血性貧血や,1型糖尿病の発症ないし悪化や,脳出血,腎機能障害の増悪など重篤な合併症が数多く知られている.それに対し,β-IFNは1型糖尿病の発症・悪化や,脳出血の合併,腎機能障害の増悪は少ないと言われている.今回1型糖尿病に伴う腎症に合併したC型肝炎にβ-IFNが著効した1例を経験したので報告する.症例は41歳男性.21歳で1型糖尿病を発症し,当院糖尿病センターに通院中.糖尿病腎症を合併し,高血圧も認めている.慢性C型肝炎も合併しており,腎機能障害の原因としてHCV関連腎症も関与している可能性も考えられた.平成20年9月に慢性C型肝炎に対するIFN導入を希望し,当科を受診.高ウイルス量でジェノタイプ2aの慢性C型肝炎であり,IFN導入の適応と判断した.しかし1型糖尿病に腎症を合併しており高血圧も認めるため,PEG-IFN/リバビリン併用療法では糖尿病の悪化及び腎機能障害の増悪や脳出血合併のリスクが高いと考えられた.β-IFN単独療法は発熱や倦怠感などの副作用は強いが,前述のような合併症はほとんどないと言われている.β-IFN単独療法施行のため,11月5日当科に入院.β-IFN単独療法を開始し,2週目でHCV-RNAは陰性化(RVR)した.β-IFN点滴を6週間施行し,外来でβ-IFNの隔日投与を6ヶ月目まで継続した.β-IFN投与終了後は,現在までC型肝炎の再発はなくSVRを達成.明らかな血糖コントロールの悪化,腎機能の増悪や脳出血の合併は認めなかった.本症例はジェノタイプ2aであるものの高ウイルス量であり,糖尿病腎症及び高血圧も合併していた.しかしβ-IFN単独療法により,特記すべき合併症もなくSVRを達成することができた.非常に稀な症例であると考えられ,文献的考察を加えて報告する.
索引用語 β-インターフェロン, 1型糖尿病