セッション情報 一般演題

タイトル 86:

イレウスにて発症した特発性腸間膜静脈硬化症の1例

演者 下川原 尚人(鹿児島市医師会病院消化器内科)
共同演者 小山 一隆(鹿児島市医師会病院消化器内科), 川畑 活人(鹿児島市医師会病院消化器内科), 岡江 耕二郎(鹿児島市医師会病院消化器内科), 中武 信純(鹿児島市医師会病院消化器内科), 宇都宮 民治(鹿児島市医師会病院消化器内科), 岩切 裕二(鹿児島市医師会病院消化器内科), 山口 淳正(鹿児島市医師会病院消化器内科), 内園 均(鹿児島市医師会病院消化器内科), 中薗 俊博(鹿児島市医師会病院外科), 田畑 峯雄(鹿児島市医師会病院外科), 清水 健(鹿児島市医師会病院病理部), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 症例は82歳女性。肋骨骨折にて近医入院中であった。多量の嘔吐・呼吸困難あり、当院紹介となった。入院時の腹部単純X線検査にて、イレウス像を認めた。腹部CTでは著明な腸管および胃の拡張を認め、上行結腸に石灰化を認めた。CT上、明らかな閉塞機転・腸管壁の血流障害を疑う所見なく、保存的加療の方針とし、イレウス管を挿入した。イレウス管挿入後より、徐々に排便みられ、第6病日にイレウス管を抜去し、経口摂取を開始した。第17病日目に大腸内視鏡検査を施行した。盲腸から、横行結腸脾弯曲付近まで、暗紫色かつ浮腫状の粘膜あり、小潰瘍・びらんを伴っていた。色調変化は盲腸・上行結腸が著明で、下行結腸・直腸の粘膜には異常を認めなかった。上行結腸の生検では、粘膜固有層に中等度のリンパ球と軽度の好中球の浸潤がみられ、部分的に間質と毛細血管に膠原繊維の沈着がみられた。以上より、特発性腸間膜静脈硬化症と判断した。経口摂取開始後も症状の再燃なく、経過観察中である。特発性腸間膜静脈硬化症は比較的まれではあるが、最近その疾患概念が確立された原因不明の疾患である。病変部位は盲腸~横行結腸までの右側結腸を首座とするものが多く、X線検査による腸管の走行に一致した石灰化、内視鏡検査による色調変化などが特徴的である。予後は比較的良好とされる。本症例も特徴的な所見を有し、保存的治療にて軽快したが、今後症状の再燃・病変の遠位大腸への進展も危惧され、厳重な経過観察が必要と思われた。今回、イレウスにて発症した特発性腸間膜静脈硬化症の1例を経験したので、若干の文献的報告を加え報告する。
索引用語 特発性腸間膜静脈硬化症, イレウス