セッション情報 一般演題

タイトル 169:

閉塞性膵炎発症で発見された肺癌膵転移の1例

演者 植田 圭二郎(九州がんセンター 肝胆膵内科)
共同演者 古川 正幸(九州がんセンター 肝胆膵内科), 奥村 幸彦(九州がんセンター 肝胆膵内科), 杉本 理恵(九州がんセンター 肝胆膵内科), 船越 顕博(九州がんセンター 肝胆膵内科)
抄録 症例は55歳男性。2010年1月に肺癌(Non small cell carcinoma)と診断され、化学放射線療法を開始されたが、経過中にCDDPによる急性腎不全を来たしたため化学療法は中止となり、放射線療法のみの施行となった。治療終了後は経過観察となっていたが、5月には脳転移が出現し放射線治療を施行した。2010年8月初めより上腹部痛、膵酵素上昇を認めたため当科紹介となり、精査加療目的にて入院となった。血液検査ではAMY 327IU/l, リパーゼ 2390U/L, エラスターゼ I 12580ng/dlと膵酵素上昇を認めた。画像所見では腎機能障害のため単純CTを施行したが、膵頭部は腫大し内部へ増大傾向を示す低吸収腫瘤を認め、同部位を閉塞機転とし軽度の主膵管拡張も認めた。MRIでは膵頭部に3cm弱の低信号結節、膵管圧排像を認めた。EUSでは膵頭部に37x28mm大の血流の多い低エコー腫瘤を認め、主膵管は同部位で狭窄し尾側主膵管は4mmと軽度拡張していた。EUS-FNAはClass V adenocarcinomaであった。ERCPでは膵頭部主膵管に狭窄を認めるが、尾側主膵管の拡張の程度は軽度であり、狭窄部周囲の分枝膵管の拡張・造影剤のpooling等は認めなかった。下部総胆管は壁外性に圧排され狭窄していた。PET-CTでは肺癌原発、脳転移に一致する異常集積の他、膵全体に均一な異常集積を認めた。EUS-FNAではadenocarcinomaであり肺癌膵転移の確定診断には至らなかったが、原発性膵癌には非典型的な画像所見を認め、肺癌膵転移、閉塞性膵炎と診断した。腎不全のため化学療法は困難であり、積極的治療は行わずに経過観察している。他臓器癌の膵転移は剖検例では3~10%と比較的多いが、臨床的には稀であり、膵臓に腫瘤を形成するため膵癌との鑑別が問題となる。今回、我々は閉塞性膵炎発症で発見された肺癌膵転移の1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
索引用語 転移性膵癌, 閉塞性膵炎